研究実績の概要 |
グレリン、アドレノメデュリン(AM)ファミリーなど様々な神経ペプチド(NP)が、下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシン(VP)およびオキシトシン(OT)分泌に関係していることが報告されている。VPは、抗利尿ホルモンとしてよく知られているが、視索上核(SON)への求心性経路の1つである嗅球にVP含有細胞が局在し、嗅上皮粘膜から入力される嗅覚情報が脳内のVP放出を介して高次脳機能に関与している可能性を示したことから(Tobin and Hashimoto et al., Nature, 2010)、VPが単なる自律神経調節ホルモンにとどまらず、情動や記憶などの社会行動の調節に関係する高次脳機能調節ペプチドであることが示唆されている。 コルヒチン(CH)をラット脳室内へ投与すると、神経の軸索輸送を阻害され、細胞体の神経伝達物質が濃縮され、産生量が極微量な神経伝達物質も観察可能となる。これまでにもVP改変緑色蛍光タンパク遺伝子トランスジェニックラットの脳室内にCH投与し、SON、室傍核(PVN)、青斑核において蛍光輝度が上昇した(Todoroki et al., Stress 2010)。また、OT赤色蛍光タンパク遺伝子トランスジェニックラットの脳室内にCH投与し、下垂体後葉における赤色蛍光輝度はコントロール群と比較し減少し、SON、PVN、輪状核における赤色蛍光輝度は上昇した(Hashimoto et al., Interdisciplinary Information Sciences 2015)。これは、神経終末ではOTが分泌され、細胞体ではOTが産生および蓄積されていることを示唆された。しかし、CHを脳室内投与後の嗅球における蛍光輝度は、蛍光輝度も小さく、有意な変化は見られなかった。これまでに、嗅球におけるVP細胞は少ないが、VP受容体は多く存在することが報告されている(Tobin and Hashimoto et al., Nature, 2010)。したがって、嗅球においては、VPおよびOT産生細胞が少ない、もしくは受容体および神経終末が多く存在し、作用している可能性がある。
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