研究課題/領域番号 |
25460325
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
大坂 寿雅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 基礎栄養研究部, 研究員 (30152101)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体温調節 / 迷走神経 / カプサイシン脱感作 / 除脳 |
研究実績の概要 |
アナパイレキシアとは熱放散促進と熱産生抑制とにより能動的に体温を低いレベルに調節する生理反応である。本年までの研究により低酸素環境によって誘起されるアナパイレキシアとブドウ糖利用阻害によって誘起されるアナパイレキシアの特徴と脳機構の概要を明らかにしてきた。本年度では脂肪酸の利用阻害によっておきる低体温反応の特徴とその脳機構を調べた。 ウレタン・クロラロース麻酔下で筋弛緩剤により非動化し人工呼吸器で呼吸を維持したラットを用いた。脂肪酸のベータ酸化の阻害薬であるメルカプト酪酸(mercaptoacetate; MA)を静脈内に1.2 mmol/kg投与すると皮膚温度上昇を伴って深部体温が低下した。同量の塩化ナトリウム投与では皮膚温度も深部体温も変化しなかった。ガス交換率はMA投与ラットの方が塩化ナトリウム投与ラットに比べて有意に高く、脂肪燃焼の抑制がおきたことが裏付けられた。熱産生率は両群共に一時的に上昇し、投与溶液の高浸透圧による非特異的反応と考えられた。したがって、MAによる低体温反応は熱放散の促進によって誘起されたのであり、熱産生の減少が原因ではなかった。 ラットを一晩絶食させるとMAによる熱放散の促進反応は、絶食しない場合に比べて、有意に低下した。空腹時には熱放散を抑制する機構が働いていることが示唆された。迷走神経を横隔膜下で切断しておいたラットではMAによる低体温反応はおきなかった。無髄の一次感覚神経の機能阻害を起こす、カプサイシン脱感作処置をしたラットでもMAによる低体温反応はおきなかった。中脳より吻側部を吸引除去したラットでもMAによる低体温反応はおきなかった。MAによる低体温反応は迷走神経求心性繊維を介していること、前脳の関与が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
麻酔下ラットでMA投与によって低体温反応が誘起される実験系を確立した。迷走神経、無髄の一次求心性線維、前脳が関与することが明らかになった。低酸素によって誘起される低体温反応には迷走神経は関与しなかったが、前脳は関与することを以前明らかにしており、前脳にはMA反応と低酸素反応とに共通した機構がある可能性がある。一方、ブドウ糖代謝阻害時の低体温反応には前脳は関与しておらず、延髄腹内側部のGABA機構が不可欠であり、これは低酸素時の反応とも共通していた。
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今後の研究の推進方策 |
MA投与による熱放散反応にも延髄腹内側部のGABA機構が不可欠であるか否かを明らかにする。また、低酸素による低体温反応は視床下部の正中視索前野のノルアドレナリン受容機構や外側視索前野のGABA受容機構を介することが分かっているので、これらがMA投与による低体温反応に共通した機構であるか否かを明らかにする。さらに、今年度の実験とは逆に脂肪酸によるエネルギー供給が主体となった場合を模して、ケトン体を投与したときの体温調節系への影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額は\23,892-と少額であり、使用額の確定が年度末になったので、予定していた試薬及び動物の購入を実施する時間が無かった。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬及び動物代としてH28年度初めに使い切ってしまった。
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