研究課題
エンドセリン-1(ET-1)は血管収縮、細胞増殖など多彩な作用を有し、高血圧、動脈硬化症、心不全、脳血管攣縮、肺高血圧症などの心血管系病態の発症・進展において重要な役割を果たしている。ETの作用はET受容体(ETR)を介して発現し、細胞膜上の受容体レベルの調節は、ETの生理・病態学的に重要であると考えられている。しかし、ETRレベルの調節機構に関しては、細胞内C末端領域が重要な役割をもつこと以外にはほとんど知られていない。本研究において我々は、C末端領域のユビキチン化が、細胞内移行による受容体レベルの調節において重要な役割をもつ可能性を考え、検討を行った。HEK293細胞に安定的にエンドセリンB型受容体(ETBR)発現させ、ETBRのユビキチン化を、免疫沈降とウェスタンブロット法で解析し、ETBRの細胞内移行を、ET-1刺激前と刺激後の細胞表面上のETBRの量を比較することにより解析した。野生型ETBRではET-1刺激依存的なユビキチン化が観察された。一方、C末端領域のリジン残基をアルギニン残基に置換した変異型ETBRでは、ユビキチン化は認められなかった。野生型ETBRではET-1刺激前と比較して刺激後に、細胞表面受容体量の減少が認められた。一方変異型ETBRでは、刺激前後で大きな変化は認められなかった。野生型ETBRを発現する細胞では、ET-1刺激依存的なERKのリン酸化や、細胞内Ca2+濃度の上昇などの反応が認められる。変異型ETBR発現細胞では、ERKリン酸化の持続時間やCa2+反応の増大、増強が観察された。
2: おおむね順調に進展している
エンドセリンB型受容体がユビキチン化されること、しかし、A型受容体はされないことなどを明らかにした。これにより、アゴニスト結合による細胞内移行の後にA型、B型の両受容体が異なる運命ーリサイクルか分解かーを辿る分子メカニズムを解明する糸口をつかんだと考えられるため。
エンドセリンB型受容体のユビキチン化の分子機構を明らかにする。そのために、この受容体をユビキチン化するユビキチン化酵素を同定する。
研究期間の途中で所属研究機関を異動し、一時的に研究が滞ったため。
酵素類などの試薬や、細胞培養用の消耗品などの購入に用いる。
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