研究課題
エンドセリン-1(ET-1)の受容体(ETR)はA型(ETAR)とB型(ETBR)の2種類が存在する。両受容体は相同性が高いにも関わらず、ET-1による刺激後の運命が大きく異なる。すなわち、両受容体とも細胞膜上でET-1により刺激されると細胞内移行するが、その後ETARは細胞膜にリサイクルされるのに対し、ETBRはリソソームに輸送されて分解される。このような、異なるETR運命のメカニズムは明らかにされていないが、我々は、受容体のユビキチン化がETR運命の選択に重要な役割を果たすことを見出した。ETBRはET-1の刺激によりユビキチン化されたが、ETARはされなかった。ET-1刺激による細胞内移行および分解の速度は、ETARよりETBRのほうが早かった。C末端領域の5つのリシン残基をアルギニンに置換した変異型ETBR(ETBR 5KR)は、ET-1刺激によるユビキチン化を受けず、細胞内移行および分解の速度が低下してETARとほぼ同様となった。共焦点顕微鏡を用いた解析では、ETARおよびETBR 5KRとリサイクリング小胞のマーカーであるRab11との共局在が観察され、ETBRとETBR 5KRは後期エンドソーム/リソソームのマーカーであるRab7との共局在が観察された。ET-1による刺激の後にET-1を含まない培地に交換後しばらく後のET-1による刺激(ET-1の繰り返し刺激)では、ETBR 5KRによるERKのリン酸化レベルや細胞内Ca2+濃度の上昇の程度が、野生型ETBRのそれらよりも大きかった。これらのことより、ユビキチン化はETBRの細胞内トラフィッキング経路(リサイクリングか分解か)を制御し、その結果ETBRによる細胞内シグナルに影響を与えることが示された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Br. J. Pharmacol.
巻: 173 ページ: 1018-1032
10.1111/bph.13406