研究課題/領域番号 |
25460327
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
渡邊 博之 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323145)
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研究分担者 |
伊藤 宏 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10232464)
大場 貴喜 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80431625)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Ca 流入 / イオンチャネル / 炎症 / 血管内皮 |
研究実績の概要 |
1.ヒト冠動脈内皮細胞を用いた in vitro 実験。昨年度明らかにしたヒト冠動脈内皮細胞におけるOrai1-3発現をさらに詳細に検討するため、それぞれの特異抗体を用いて蛍光染色し細胞内での局在を見た。その結果、Orai1、2、3は細胞膜上と細胞質内の両方に発現しており、またOrai1とOrai3 は細胞膜上での共在化が示された。 2.炎症と血管内皮細胞の関連を調べるため、アラキドン酸によるOrai1/3複合体チャネル活性化を細胞内Ca測定で検討した。アラキドン酸による濃度依存性の細胞内Ca上昇は、Orai1 遺伝子ノックダウンした細胞やOrai3 遺伝子をノックダウンした細胞では、そのCa上昇が抑制されていた。炎症によって内皮細胞のOrai1/3複合体チャネルが活性化され、細胞内にCa流入が引き起こされることが示された。 3.炎症と内皮機能の関連を検討するためNO産生DAF2を用いて検討した。その結果、アラキドン酸によりNO産生が促進され、その効果はOrai1 遺伝子ノックダウンした細胞やOrai3 遺伝子をノックダウンした細胞では減弱していたことから、Orai1/3複合体チャネル活性化によるCa流入がNO産生すなわち内皮機能に密接に関わっていることが推測された。 4.臨床的研究として、内皮機能の指標の一つといわれている尿中アルブミンが、これまで示されてきた微量アルブミンよりも低い濃度で心不全の予後規定因子となりうるという論文を発表した(Watanabe H, Circ J 2014)。またその治療の一つとして心不全患者にASV療法を施すと尿中アルブミンが減少すること、すなわち内皮機能が改善する可能性を報告した(Tamura Y & Watanabe H, J Cardiol, 2014)。 5. 睡眠時無呼吸症の患者では、血管炎症の指標されているPTX3が上昇しており、それがCPAPによって改善することも報告した (Kobukai Y & Watanabe H, J Appl Physiol, 2014).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroでの炎症と内皮細胞増殖に関する実験が予定より遅れている。preliminary 実験ではそれぞれOrai 1,3 ノックダウンした細胞で、血清刺激の細胞増殖が抑制されることは示されたが、アラキドン酸刺激での細胞増殖はデータのばらつきが大きく、アラキドン酸の適切な濃度設定がなされていない。そのため、スタチン、PPAR活性化薬やARBなど各種薬剤のNO産生や細胞増殖に対する効果判定も持ちこされている。今後、炎症性内皮細胞増殖の実験系の確立を急ぐ必要がある。 また、STIM1 K.O. マウスを用いる実験系は、同マウスの数が足りず、研究が思ったようには進んでいない。このまま、STIM1 K.O. マウスの実験がうまくいかない場合は、かわりに、STIM1をノックダウンした培養細胞系などを用いて研究を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Dahl高血圧ラットあるいは浸透圧ポンプ下慢性AngⅡ連続投与を行った慢性高血圧誘発ラットを作製し、同モデルでの内皮機能異常と初代培養細胞を用いた実験での内皮Ca流入異常を実証する。それら血管不全モデルを用いた実験から、TRP/STIMI/Oraiシステムの内皮発現異常が、高血圧の病態下で起こっており、内皮機能異常に連関していることを明らかにしたい。また、前述のように早期にアラキドン酸での炎症細胞モデル系を確立し、内皮機能改善作用が示唆されている既知の薬物(PPAR活性化薬、インクレチン、スタチンなど)により、内皮依存性弛緩反応やSOC,RPC,SACを介した内皮Ca流入が改善していることを確認する。その結果、内皮イオンチャネルリバースリモデリングを引き起こす薬物を同定する。遂行が遅れているSTIMIK.0.マウスでの大動脈内皮を用いた、生理反応(血管拡張反応)、分子生物学的研究(内皮での発現チャネル)も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、STIMIK.0マウスの数が予定したよりも少なく、そのため研究が遅れ、その分次年度使用額が生じた。また、アラキドン酸による内皮細胞増殖反応の実験系の確立も遅れたため、その後の薬効評価をみる研究が進まず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年よりも同マウスの確保が見込まれることを期待し、その次年度使用額分を、STMIK.0マウス関連の研究に使用したい。また、アラキドン酸誘発性内皮増殖反応に対する薬効評価の研究に使用したい。
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