研究課題/領域番号 |
25460328
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
菅波 晃子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10527922)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬理学 / 癌 / 核酸 / 脂質 / 生体機能利用 |
研究実績の概要 |
がん化学療法では,静脈内投与した抗がん剤の血中濃度を治療有効域に維持することは難しい.また,標的の腫瘍組織に対する細胞毒性効果が正常組織にも波及して重篤な副作用を生じる場合も多い.これらの問題を克服するため,抗がん薬を効率良く標的部位に到達させる運搬体の開発が精力的に行われている.しかし,薬物の「血中での安定な保持・運搬」と「標的部位での特異的放出」という,相反する性質を兼ね備えなければならないジレンマが存在する. 申請者らは,これまでに“ICG修飾リポソーム”(特願2010-124252号・PCT/JP2011-00306)を開発し,EPR効果とICGが有する光吸収特性を利用した「光線力学的温熱化学療法」を開発してきた(特願2011-223273号・PCT/JP2012/076259). 平成26年度は,腫瘍集積機能を有するRNA塩基配列に関する最適化を行うことにより,2種類(44塩基:NGFR-65-S-1_44merと60塩基:NGFR-65-S-2_60mer)のRNA医薬を創生した.また,ICG誘導体およびペプチド医薬を組み込んだICG修飾・ペプチド含有リポソームを投与した担がんマウスを用いた実験系により,ICG 誘導体が有する光吸収特性による光線力学療法(一重項酸素発生による免疫誘導)と温熱療法(発熱による壊死誘導)を近赤外蛍光治療装置により確認すると共に,ペプチド医薬による悪性黒色腫幹細胞の機能制御を腫瘍体積変化,生存期間,FACS 解析,実験病理学的解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において創出を目指している“MSCTリポソーム”には,①腫瘍集積機能,②光応答機能,③細胞系譜断絶機能に関する3つの機能を付与することにより,薬剤運搬体であるリポソームの高機能化を図る予定である. 当初の予定では,平成25年度中に①腫瘍集積機能を担うRNA医薬の創出を完了する予定であったが,スクリーニングによって最適なRNA塩基配列を選択する段階で停滞した. しかしながら,平成26年度は,1) スクリーニングの条件,2) 生体分子間相互作用測定の条件を検討し直すことにより,所期の結果を得ることができた.さらに,スクリーニングによって選抜された腫瘍集積機能を有するRNA塩基配列に関する最適化を行うことにより,2種類(44塩基:NGFR-65-S-1_44merと60塩基:NGFR-65-S-2_60mer)のRNA医薬を創生した.これにより,当初の予定に若干の遅れ(RNA医薬の化学合成に係る約3ヶ月間)を取ってはいるものの,ほぼ,目的を達成することができた. 次に,“MSCTリポソーム”の②光応答機能と③細胞系譜断絶機能に関しては,ICG誘導体およびペプチド医薬を組み込んだ“ICG修飾・ペプチド含有リポソーム”を投与した担がんマウスを用いた実験系により,ICG 誘導体が有する光吸収特性による光線力学療法(一重項酸素発生による免疫誘導)と温熱療法(発熱による壊死誘導)を近赤外蛍光治療装置により確認すると共に,ペプチド医薬による悪性黒色腫幹細胞の機能制御を腫瘍体積変化,生存期間,FACS 解析,実験病理学的解析を行っている.こちらに関しても,当初の予定に若干の遅れ(上記の解析結果の評価に係る約3ヶ月間)を取ってはいるものの,ほぼ,目的を達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,まず,①腫瘍集積機能を担うRNA医薬(44塩基:NGFR-65-S-1_44merと60塩基:NGFR-65-S-2_60mer)を化学合成により創製し,“MSCTリポソーム”を構築する. 次に,“MSCTリポソーム”の②光応答機能と③細胞系譜断絶機能に関して,ICG誘導体・ペプチド医薬・RNA医薬を構成成分とする“MSCTリポソーム”を投与した担がんマウスを用いた実験系により,光線力学療法(一重項酸素発生による免疫誘導)・温熱療法(発熱による壊死誘導),腫瘍体積変化・生存期間・FACS解析・実験病理学的解析によって評価する. さらに,平成26年度の“ICG修飾・ペプチド含有リポソーム”に関する評価と比較検討することにより,RNA医薬を追加修飾したことによる効果を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では,平成25年度中に①腫瘍集積機能を担うRNA医薬の創出を完了する予定であったが,スクリーニングによって最適なRNA塩基配列を選択する段階で停滞した.そのため,平成25年度は,約114万円の次年度使用額が生じた. 今年度,条件検討等を行うことにより,当初の予定に若干の遅れ(RNA医薬の化学合成に係る約3ヶ月間)を取ってはいるものの,ほぼ,目的を達成することができた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度における計画としては,上記のように、①腫瘍集積機能を担うRNA医薬を化学合成による創製と,“MSCTリポソーム”の構築を行うと共に,“MSCTリポソーム”の②光応答機能と③細胞系譜断絶機能に関して,ICG誘導体・ペプチド医薬・RNA医薬を構成成分とする“MSCTリポソーム”を投与した担がんマウスを用いた実験系により,腫瘍体積変化・生存期間・FACS解析・実験病理学的解析によって評価する.さらに,平成26年度の“ICG修飾・ペプチド含有リポソーム”に関する評価と比較検討することにより,RNA医薬を追加修飾したことによる効果を評価し,論文として発表する予定である. そのため,物品費として,RNA医薬合成費 約80万円,ペプチド医薬合成費 約30万円,動物実験費 約50万円,試薬・プラスティック製品費 約25万円.その他として,英文校正費 約5万円,別刷代 約20万円を計上する.
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