研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、血管拡張作用をはじめ、抗酸化作用、抗炎症作用、臓器保護作用など多彩な生理活性を有する内因性ペプチドである。脂肪細胞でもAMとAMの受容体活性調節タンパクであるRAMP2は高発現を認めるが、脂肪細胞におけるAM-RAMP2システムの役割や、メタボリックシンドロームにおける病態生理学的意義は明らかでない。本研究では、新たに脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(A-RAMP2-/-)を樹立し、AM-RAMP2システムの、脂質代謝およびエネルギー代謝調節における意義や、脂肪細胞の分化制御における役割を解明し、それらの知見をもとに、メタボリックシンドロームの新たな治療法開発へ展開することを目的とする。平成26年度は、作成したA-RAMP2-/-の脂肪組織の病理解析および遺伝子発現解析を主に行った。A-RAMP2-/-は野生型マウスと比較して、白色脂肪細胞が肥大化し、マクロファージ浸潤が増加していた。また、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析により、白色脂肪組織において炎症性サイトカインやマクロファージマーカーの上昇、脂肪酸β酸化系遺伝子の発現低下が認められた。また、褐色脂肪組織においては、ミトコンドリア関連遺伝子の発現低下が見られた。以上の結果より、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞ともに、AM-RAMP2システムが脂肪細胞の分化およびエネルギー代謝制御に関与することが示唆された。さらに詳細なメカニズムを解明することにより、AM-RAMP2システムが治療の有用な標的となるか明らかになると考える。
2: おおむね順調に進展している
脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(A-RAMP2-/-)の病理解析および遺伝子発現解析を行った。リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析により、A-RAMP2-/-は、野生型マウスと比較して、白色脂肪組織において炎症性サイトカインやマクロファージマーカーの上昇、脂肪酸β酸化系遺伝子の発現低下が認められた。また、褐色脂肪組織においては、ミトコンドリア関連遺伝子の発現低下が見られた。以上の結果より、脂質代謝およびエネルギー代謝調節にAM-RAMP2システムが関与することを明らかにした。当初目的としていた白色、褐色脂肪組織の解析ができているため、おおむね順調に進展していると判断できる。
平成27年度は、脂肪細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(A-RAMP2-/-)の褐色脂肪組織の解析を中心に行い、脂肪細胞におけるAM-RAMP2システムの役割をさらに詳細に解析する。また、A-RAMP2-/-に高脂肪食を投与した肥満誘導モデルを作成し、肥満およびメタボリックシンドローム病態での脂肪組織の解析を行い、普通食投与マウスと比較することにより、脂肪細胞におけるAM-RAMP2システムの役割をより明確にする。
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