研究課題
Differentiation-inducing factor(DIF:細胞性粘菌分化誘導因子)は細胞性粘菌が分泌する化学物質であるが、哺乳類の腫瘍細胞にも増殖抑制作用を持つことが報告されている。本研究は腫瘍細胞に対し強力な増殖抑制作用を持つDIF-1またはDIF様物質の抗悪性腫瘍薬としての臨床応用を目指すものである。この中で今年度は、DIF-1の抗腫瘍効果の検討を悪性黒色腫細胞B16BL6を用いてin vitroおよび in vivoで行った。マウス由来悪性黒色腫細胞B16BL6において、DIF-1は強力な増殖抑制作用を発揮し、また細胞の浸潤および移動を阻害することが明らかとなった。従来DIF-1の効果はGSK-3betaの活性かに起因すると考えていたが、今回DIF-1はGSK-3betaの活性化のみならずGSK-3alphaも活性化することを明らかとした。また、恒常的にルシフェらーゼを発現するB16BL6を作製し、これをマウスの尾静脈より注入し、悪性黒色腫の肺転移について検討するモデルを用いてDIF-1の経口投与を行った。すると、DIF-1の経口投与により明らかに転移巣の数、大きさが縮小した。また、摘出肺のルシフェらーゼ活性を調べたところ、DIF-1の経口投与により有意に減弱することがわかった。また、摘出肺組織を用いた解析から、in vitroの系で見られたように、DIF-1がGSK-3alphaおよびGSK-3betaの活性化を引き起こしていることを見出した。これらの結果から、現在のところ有効な経口抗腫瘍薬は殆ど報告されていないが、DIF-1はその候補薬の一つとして臨床応用が可能ではないかと思われる。
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J Pharmacol Sci,
巻: 127 ページ: 446-455
10.1016/j.jphs.2015.03.005