研究課題/領域番号 |
25460336
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
久留 和成 佐賀大学, 医学部, 助教 (00592081)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中枢神経 / 代謝学 / 糖尿病 / 肥満 |
研究概要 |
小腸におけるGlucagon-like peptide 1 (GLP-1)分泌細胞は、細胞外液の高グルコース負荷にてGLP-1の分泌が促進されることから、脳幹におけるGLP-1分泌神経細胞におていも同様の分泌機序が存在していることが予想される。そこで、小腸と脳幹におけるGLP-1分泌機序の相違点を明らかにすることを目的とし、スライスパッチクランプ法を用いて、細胞外液の高グルコース刺激に対するGLP-1分泌神経細胞の神経応答の有無を解析した。 神経応答の記録に用いた全GLP-1分泌神経細胞(n=23)のうち約48%の神経細胞は高グルコース刺激にて、細胞活性が抑制され、ほぼ同数に当たる約48%の神経細胞は高グルコース刺激に対して神経活性に全く変化が観察されなかった。また、小腸のGLP-1分泌細胞同様に高グルコース刺激にて電気的興奮が観察された細胞は、わずかに1細胞のみであり、脳幹におけるGLP-1の分泌機序は、小腸のGLP-1分泌機序とは異なる可能性が示唆された。 さらに詳細なグルコース応答の解析を行うために、標的細胞に対して単一細胞RT-PCR法を行った。実験に用いた全細胞からGLP-1の前駆物質であるpreproglucagonの mRNA発現が確認され、標的細胞そのものがGLP-1分泌能を有していることは確認できたが、多くの細胞にてグルコース応答に関与しているとの報告があるグルコキナーゼの発現は確認できなかった。 これらの実験結果から、GLP-1分泌神経細胞はグルコースに対する感受性を有しているものの、そのグルコース応答においてグルコキナーゼは関与していない事が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GLP-1そのものが、腹腔内投与および脳室内投与にて同様の生理作用(食欲減退および体重減少)を示すことから、脳幹内におけるGLP-1分泌機序と小腸におけるGLP-1分泌機序に類似点があると仮説を立て、細胞外グルコース刺激を行ったが、実験結果が仮説と全く逆の結果となり、実験の手技および仮説の再考が必要となったため、達成度に若干の遅延が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
食欲に関連する物質をターゲットにしているため、生理条件下(例えば、空腹時あるいは満腹時 等)における情報伝達の差異を考慮し、新たに実験動物の活動時間帯を実験条件に加えて、暗期(マウスにおいては活動時間帯)と明期(休息時間帯)の2条件下にて、同様の実験を行い比較し解析する。 グルコース刺激のみで無く、神経ペプチドや食欲調節因子 等の刺激因子を用いてGLP-1分泌神経細胞の修飾因子を同定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験計画の遅延に伴い、使用額が少なくなり次年度使用額が生じてしまった。 本年度の実験結果を踏まえ、実験計画の修正を行い本年度分の試薬 等の消耗品購入に充てる予定である。
|