クラスリン重鎖は核においてp53転写活性を調整することが知られている。我々は細胞に各種ストレスを加え、核へのクラスリン蛋白質の局在変化がおこるか調べた。p53を発現する細胞株HCT116を処理後、細胞を核分画と細胞質分画に分離してそれぞれの分画におけるクラスリン蛋白質量をウエスタンブロット法で解析した。紫外線およびドキソルビシンによるDNA障害性ストレスでは、核分画における有意なクラスリンの増加は認められなかったが、呼吸鎖の複合体I阻害薬であるロテノンにより、核内クラスリンの有意な増加が見いだされた。さらに免疫染色にて解析を行ったが、しかしこの方法ではロテノンによる核へのクラスリン局在変化を見いだすことが出来なかった。今後、この矛盾を解明する必要がある。 ここで我々は、さらにクラスリンの特性を解析するため生化学的解析を行った。クラスリンにはCHC17とCHC22の二つのアイソフォームが存在する。クラスリンを多く発言するHeLaからクラスリンをCHC17とCHC22の重合と脱重合特性について解析したところ、CHC17が生理学的条件下において脱被覆ATPaseの働きで脱重合するのに対してCHC22は抵抗性であった。この性質の違いを利用してCHC17とCHC22を分離することに成功した。両者の重合はpH依存性が大きく異なっており、クラスリン局在が複雑になるのはこういった性質の違うアイソフォームの存在も関係する可能性がある。
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