前年度までに論文発表した内在性ヒューマニン様活性タンパク質calmodulin-like skin pritein (CLSP)のin vivoでの抗アルツハイマー病効果を検討するためにトランスジェニックマウスを作成した。このトランスジェニックマウスと世界的に頻用されているアルツハイマー病モデルマウス(APP/PS1deE9)を交配させ、APP/PS1delE9/CLSPトランスジェニックマウスを世界で初めて作成した。これらのマウスを用いモリス水探索試験などの行動観察実験を行った。その結果、APP/PS1delE9/CLSPトランスジェニックマウスで空間認知能が改善されていることが分かった。現在、その分子機構について詳細に検討を行っている。
2014年12月に発表されたアルツハイマー病の危険因子となるuncordinated-5C (UNc%C)遺伝子のT835M変異体の神経細胞死機序の検討を行った。その結果、(1)野生型及びT835M-UNC5C変異体はその過剰発現で神経細胞死を誘導し、(2)それらはUNC5Cのリガンドの1つであるnetrin1によって抑制されること、(3)CLSPがT835M-UNC5C誘導性神経細胞死を抑制すること、(3)T835M-UNC5C変異体が誘導する神経細胞死の細胞内シグナル伝達にはdeath-associated protein kinase/protein kinase D/ASK1/JNK/NADPH oxidase/caspasesが関わること、(4)netrin1処理によってAPP誘導性神経細胞死が部分的に抑制されることが明らかとなった。これらの結果から、今後はこの変異体が誘導する神経細胞死のin vivoでの検証やアルツハイマー病発症へのnetrinやCLSPの関与を検討したいと考えている。
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