研究概要 |
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体修飾薬による房室ブロックの発生がS1P受容体を標的とする免疫調節薬の開発を進める際の課題になっている。今年度は、S1P受容体修飾薬fingolimodによる房室伝導の抑制機序を薬理学的および電気生理学的手法を用いて検討した。クリーンモルモット(Std:Hartley、日本エスエルシー株式会社)の腹腔内にthiopental(50 mg/kg)を投与して麻酔を導入し、人工呼吸器(シナノ製作所)を用いてhalothaneを吸入(1-2%)することで麻酔を維持した。血圧測定と薬液投与用のカテーテルを動静脈に挿入した。心電図測定用の電極を四肢に装着した。右房内に刺激用電極カテーテルを留置し、洞調律および固定心拍数(200-300 beats/min)における心電図を測定した。以上の測定項目はポリグラフシステム(日本光電、RM-6000)を用い、サーマルアレイレコーダー(日本光電)に波形を記録した。電気生理学的解析として洞調律拍動に加えて心房をプログラム電気刺激することによりfingolimodの房室伝導に対する作用をより詳細に評価した。用量反応性を検討したところ、予備検討の結果と同様に、fingolimod(0.1 mg/kg, i.v.)で房室ブロックが観察された。次に、Giタンパク阻害薬(pertussis toxin; PTX, 10 micro g/kg, i.v.)を用いてfingolimodによる房室伝導の抑制機序を解析した。PTXはfingolimodによる房室ブロックの発生に影響を示さなかった。Fingolimod による房室ブロックの発生はGiタンパクを介さないのか、あるいは今回用いたPTXの用量ではGiタンパクを十分抑制できなかったのか、更なる検討が必要である。
|