研究課題
スフィンゴシン1-リン酸受容体修飾薬による房室伝導ブロックの発生機序の解明のため、前年度に引き続きモルモット心の房室結節やヒス束などの心筋各組織を、組織化学的手法を用いて生理活性を保持したまま単離し、保存した。すなわち、クリーンモルモット(Std: Hartley、日本エスエルシー株式会社)をペントバルビタール(50 mg/kg, i.p.)で全身麻酔し、心臓を摘出した。ただちに摘出心をドライアイスで-80度に保ったchlorodifluoromethane 内で瞬間凍結した。厚さ20ミクロンの薄層切片を作製し、刺激伝導系を同定するために10枚おきに1枚に対し acetylcholineesterase 染色を行なった。残りの9枚は真空凍結乾燥した。昨年度と今年度で合計10コの心臓に対して以上の作業を実施した。染色標本を指標に房室結節部分を実体顕微鏡下で切り出し、膜標本を作製し、酵素的蛍光法を用いて薬理学的分析を行った。イソプロテレノールおよびNaFはアデニル酸シクラーゼ活性を濃度依存的に刺激したが、カルバコールおよびフィンゴリモドはアデニル酸シクラーゼ活性を濃度依存的に抑制した。以上より、スフィンゴシン1-リン酸受容体修飾薬は房室結節のS1P1受容体を介してGiタンパクを活性化し、そのαサブユニットがアデニル酸シクラーゼ活性を抑制することが示された。また、洞房結節と同様に、活性化したβγサブユニットが房室結節細胞のIKAChチャネルを開口させる可能性も示唆された。
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