Erythropoietin(EPO)は糖尿病の血管障害を抑制する可能性について研究を進めてきた。STZ誘発1型糖尿病モデルラットの大動脈リング標本の内皮依存性血管弛緩反応をEPOが改善し、その機序として大動脈のマクロファージの浸潤、接着分子であるMCP-1の発現増大などの炎症をEPOが抑制することが示された。EPOは血管組織中のNADPH oxidase m-RNA発現および酸化ストレス指標のMDAの増加も抑制した。また、血圧、血糖値、HbA1Cに影響を与えることなくSTZ糖尿病モデルラットのadvanced glycation end product (AGE) 受容体の発現を抑制したことより、抗酸化、抗炎症を介して血管保護に関わる可能性が示唆された。そこで、AGE受容体に親和性があると報告されているω3系脂肪酸の血管保護効果とAGE、AGE受容体の関係について、脳卒中易発症性高血圧モデルラット(DOCA-salt)を用い、α-リノレン酸及び抗酸化作用をもつリグナン含有自然食品の効果について検討を行ったところ、α-リノレン酸はDOCA-saltラットの昇圧を抑制し、腎障害、脳卒中の発症を有意に抑制することが示された。さらにこの自然食品中の有効成分を検討するため、α-リノレン酸、リグナン、食物繊維をそれぞれ個別に投与する群を作成し検討を行った結果、α-リノレン酸が降圧、腎血管保護の主体を占めることが明らかとなった。そこで、αリノレン酸投与DOCA-saltラットの血管AGE並びにAGE受容体について検討したが、各群間に有意な差は認められなかった。また、αリノレン酸とEPOの併用による降圧、尿蛋白排泄量、臓器保護効果については更なる相乗効果は認められなかった。 よって、STZ誘発糖尿病モデルにおけるEPOの血管保護効果はAGE受容体抑制を一部は介する、抗酸化作用に基づくものと考えられる。高血圧モデルラットにおけるω3系脂肪酸のα-リノレン酸の降圧、臓器保護効果に対するAGE、AGE受容体を介する機序は少ないものと考えられた。
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