研究課題/領域番号 |
25460349
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
西奥 剛 福岡大学, 薬学部, 助教 (90435115)
|
研究分担者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 助教 (60570801)
山内 淳史 福岡大学, 薬学部, 准教授 (90341453)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | CD147 / 脳血管性認知症 / シクロフィリンA / オリゴデンドロサイト |
研究概要 |
小血管性認知症において白質病変は大きな病理学的特徴であり、認知症以外に運動障害や言語障害など多彩な神経症状を呈する。細胞外シクロフィリンA(CypA)の受容体であるCD147は、マトリックスメタロプロテアーゼ誘導因子としての役割だけでなく、オリゴデンドロサイトに豊富に存在するモノカルボン酸輸送体1を細胞膜上に輸送するシャペロンタンパク質としても機能する。そこで、本研究は脳血管性認知症の発症・進展機構に迫る新機軸として、CypAとCD147に着眼し、脳血管性認知症発症の分子機構を明らかにすることにより、新たな治療戦略ならびに新規認知症治療薬開発への活路を開く実験証拠を提示することを目指すものである。本研究では、「脳血管性認知症における白質病変において、CypA‐CD147シグナルが軸索からオリゴデンドロサイトの脱落を誘発する」との仮説を検証する。 本年度は、大脳白質におけるCD147の発現に発達的変化があるか検討するため、生後1日齢から生後21日齢のマウスの脳におけるCD147の発現を解析した。CD147は生後1日目より発現がみられ、生後14、21日目で発現が増加した。ミエリン構成タンパク質であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の発現はCD147発現が増大する生後14日目から発現が認められ、ミエリンの産生とCD147の発現増加に相関があることが示唆された。次に白質障害時におけるCD147 の発現について検討を行うため、現在マイクロコイルをマウス総頸動脈に装着し、慢性的な脳血流の低下により白質障害を誘導する白質病変モデル動物を作成中である。またマウスならびにラットより初代培養オリゴデンドロサイトを調製し、オリゴデンドロサイト前駆細胞からミエリン産生オリゴデンドロサイトへの分化におけるCD147の発現変動について現在解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小血管性認知症の白質病変モデル動物として、慢性脳低血流モデルを作成中である。慢性脳低血流による白質病変モデルマウスはマイクロコイルをマウス総頸動脈に装着し、慢性的な脳血流の低下により白質障害を誘導する。白質病変の評価は、白質(脳梁、尾状核等)を含む切片を作製し、Kluver-Barrera染色ならびにMBPの免疫染色により行っている。また免疫染色によりミクログリアの集積、オリゴデンドロサイトの脱落ならびに神経細胞障害、特に軸索の障害について検討中である。 ミクログリアによるCypAの細胞外遊離については現在ELISAを構築中である。 また、H26年度より開始予定であったオリゴデンドロサイトの初代培養を、本年度より着手した。現在、生後1日目のラットより初代混合グリア培養を行い、培養10~14日目にオリゴデンドロサイト前駆細胞を単離し、ミエリン産生オリゴデンドロサイトの培養を行っている。オリゴデンドロサイト前駆細胞ならびにミエリン産生オリゴデンドロサイトのマーカーを用いミエリン産生オリゴデンドロサイトへの分化条件の検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度から引き続き白質病態モデル動物を作成し、白質病変の症状を行動学的に評価する。またKluver-Barrera染色ならびに免疫染色によりミクログリアの集積、オリゴデンドロサイトの脱落について検討し、白質病変の評価を行う。また、白質障害時におけるCypAならびにCD147の発現変動をウエスタンブロッティングにて解析を行う。また脳切片を作成し、免疫染色によりCypAならびにCD147の局在について検討する。またMBPとCypAならびにCD147との二重染色を行い白質におけるCypAならびにCD147の発現変動について検討する。 初代培養オリゴデンドロサイトを調製し、オリゴデンドロサイトの分化過程におけるCD147の発現変動について引き続き解析を行う。また初代培養オリゴデンドロサイトをCypAで刺激後、MMP産生をザイモグラフィーにて検討する。CypAによるMMP産生にCD147が関与するか、抗CD147抗体による阻害実験ならびにsiRNAによるCD147のノックダウンにより検証する。
|