研究課題
基盤研究(C)
心臓、腎臓、脳、腸間膜など主要細動脈の筋原性収縮(myogenic tone)は、末梢血管抵抗の調節や血流の自動調節などに重要な役割を果たしているが、その分子機構は未だ不明な点が多い。これまでに申請者は、様々なイオン輸送分子(NCX1, TRPC3など)やプロテインキナーゼが筋原性収縮に関与することを示す結果を得ており、筋原性収縮の分子機構を理解するためには、収縮機能と共にイオン輸送分子間の機能連関ならびにその制御機構を時空間的に、統合的に解析することが重要であると考えている。本研究では、血管平滑筋細胞を標的としたイオン輸送分子可視化マウスやイノシトールリン脂質可視化マウスを開発することにより、筋原性収縮の分子機構とその破綻による病態機序について、イオン輸送分子の局在・集積・機能制御の側面から明らかにすることを目的としている。平成25年度は、ライブイメージング解析に用いるための血管平滑筋特異的可視化マウスとして、血管平滑筋NCX1可視化マウス、細胞内Caシグナル可視化マウス、ホシホイノシチド局在可視化マウスの作製に成功した。現在、これらマウスの腸間膜動脈に生理的灌流圧(0~120 mmHg可変)を負荷したときのNCX1局在および細胞内Ca濃度変化について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、ライブイメージング解析に用いるための血管平滑筋特異的可視化マウスの作製を計画していた。具体的には、血管平滑筋αアクチンプロモーターを用い、CaセンサーGCaMP6(細胞内Caシグナル可視化マウス)、GFP誘導体標識NCX1、TRPC3およびTRPC6(輸送分子可視化マウス)、PI(4,5)P2センサーGFP-PLCδ-PHおよびPI(3,4,5)P3センサーEGFP-Btk-PH(ホスホイノシチド局在可視化マウス)を血管平滑筋特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製する計画であり、これまでに、血管平滑筋NCX1可視化マウス、細胞内Caシグナル可視化マウス、ホシホイノシチド局在可視化マウスの作製に成功している。細胞内Caシグナル可視化マウス、ホシホイノシチド局在可視化マウスについてはTet-on systemを用いているため、プローブ発現量を誘導調節できる。現在、これらマウスの腸間膜動脈に生理的灌流圧(0~120 mmHg可変)を負荷したときのNCX1局在および細胞内Ca濃度変化について解析を進めており、おおむね順調に進展していると考えられる。
平成26年度は、昨年度に得られた血管平滑筋特異的可視化マウスの腸間膜動脈を用い、血管径と蛍光変化の同時測定を引き続き行うことにより、筋原性収縮におけるイオン輸送分子間の機能連関とその制御機構について検討する。また、各種可視化マウスの腸間膜細胞脈を用い、筋原性収縮と受容体刺激収縮(α1、5-HT)の分子機序について、細胞内Ca動態、イオン輸送分子の膜移行、ホスホイノシチド動態の側面からイメージング解析する。特異的NCX阻害薬(SEA0400、YM-244769)、特異的TRPC3阻害薬、ホスホイノシチド代謝修飾薬(U73122、LY294002、Heparin、CRT359)などを用いた薬物添加実験ならびにNCX1、TRPC3、TRPC6、Na,K-ATPaseα2の遺伝子欠損マウスや平滑筋特異的高発現マウス(野生型・ドミナントネガティブ変異型)、PIP2産生酵素であるPIP5K(ホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ)の遺伝子欠損マウスの各種可視化マウスを交配による遺伝子導入により作製し、これら遺伝子改変導入による筋原性収縮の分子機序に及ぼす影響を受容体刺激収縮の場合と比較する。さらに、これらマウスを用いて各種血管障害モデル(食塩感受性高血圧、血管肥厚、動脈硬化、糖尿病など)を作製し、腸間膜細胞脈における筋原性収縮(受容体刺激収縮と比較)の制御異常を調査するとともに、細胞内Ca動態、イオン輸送分子の細胞膜移行、ホスホイノシチド動態の側面からその異常の分子機序を解析する。
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