心臓、腎臓、脳、腸間膜など主要細動脈の筋原性収縮(myogenic tone)は、末梢血管抵抗の調節や血流の自動調節などに重要な役割を果たしているが、その分子機構は未だ不明な点が多い。これまでに申請者は、様々なイオン輸送分子(NCX1、TRPCなど)やプロテインキナーゼが筋原性収縮に関与することを示す結果を得ており、筋原性収縮の分子機構を理解するためには、収縮機能とともにイオン輸送分子間の機能連関ならびにその制御機構を時空間的に、統合的に解析することが重要であると考えている。本研究では、血管平滑筋細胞を標的としたイオン輸送分子可視化マウスやイノシトールリン脂質可視化マウスを開発することにより、筋原性収縮の分子機構とその破綻による病態機構について、イオン輸送分子の局在・集積・機能制御の側面から明らかにすることを目的としている。 最終年度は、PIP2産生酵素であるPIP5Kβのノックアウトマウスの腸間膜動脈に生理的灌流圧(0~120 mmHg可変)を負荷したときの筋原性収縮を測定し、野生型マウスに比較して筋原性収縮が抑制されることを見出した。さらに、本マウスの血管ではNCX1の遺伝子発現が低下していたことから、PIP2のNCX1発現調節が腸間膜動脈の筋原性収縮に関与する可能性が示された。
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