研究課題/領域番号 |
25460351
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 恭丈 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (40397914)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | エピジェネティクス / SAM合成酵素 / コンディショナルノックダウン / ヒストンメチル化 / DNAメチル化 |
研究概要 |
メチオニン・アデノシル転移酵素II(MATII)は、触媒サブユニット(α)と機能不明な非触媒サブユニット(β)から構成され、S-アデノシルメチオニン(SAM)の生合成を触媒する。合成されたSAMはメチル基転移酵素(MT)の基質として利用され、そのメチル基はDNA中のシトシンやヒストンのリジン残基などへ転移され、クロマチンレベルでのエピジェネティクスを支配する。本研究の主題は、ヒストンやDNAのメチル化を包括的に低下させる方法を開拓し、細胞記憶を消去し、クロマチンと細胞の可塑性を高める技術を開拓することである。平成25年度では、siRNAによる一過性のMATIIαノックダウンに加え、薬物誘導によりshRNAを発現させる「コンディショナルノックダウン」のES 細胞を作製することを試みた。この細胞から、ヒストンやDNAのメチル化を検出し、遺伝子発現プロファイリングまでの研究遂行を目指した。まず、MATIIαのshRNAを構築して、マウス肝癌細胞株(Hepa1)に遺伝子導入して、一過性のノックダウンを確認した。また、この細胞株を用いて全タンパク質抽出を行い、ナノ液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC-MS)による発現タンパク質の同定と定量の測定を行った(プロテオミクス解析)。この解析から、タンパク質同定数が約4000種程度になったことから、コントロール細胞と比較して、MATIIαノックダウンによって発現量の変動したタンパク質を同定した。一方で、構築できたMATIIαのshRNAは、ES細胞に遺伝子導入しているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りに研究が遂行できている。まず、MATIIαのsiRNAが成功しているので、その標的配列を利用することができ、効率良く個構築することができた。一方で、MATIIαノックダウンによるタンパク質発現のプロファイリングは、最新の質量分析システムを利用したことで、予想以上の成果が得られた。このことから、遺伝子発現プロファイリングの解釈が容易になり、MATIIによる包括的なエピゲノム制御の意義も見いだし易くなった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、SAMを産生するMATIIαのノックダウンES細胞をいよいよ構築して、そのヒストンやDNAのメチル化状態を調べる。特に、質量分析装置を最大に活かして、ヒストンH1バリアントを区別して、そのメチル化の変動を捉えたり、DNAマイクロアレイ解析から、遺伝子発現プロファイリングを完成さたりして、MATIIによる包括的なエピゲノム制御機構を解明していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ES細胞へのノックダウン構築に必要な遺伝子導入可能な細胞株を、海外から入手する費用を繰り越したことと、当初、予定していた遺伝子発現プロファイリング解析に必要とした諸費用もタンパク質レベルの解析で、年度を越してしまうことが分かったためであり、残りの解析(DNAマイクロアレイ)に必要とする諸費用は、次年度へ繰越しとする。 実験計画に基づいて、ES細胞株の入手および、DNAマイクロアレイ解析もおこなう。それぞれに当初から予定していた諸費用を、繰り越した費用から捻出する。
|