研究課題
抗原で活性化されたBリンパ球は抗体を分泌する形質細胞へ分化する。その際に一部の活性化B細胞はクラススイッチDNA組換え反応を実行し、抗体のアイソタイプを変換する。B細胞は遺伝子発現パターンを大幅に変化させるが、ひとつひとつの細胞において、実際にどの様に遺伝子ネットワークが変化するのかという点は諸説あり完全解明には至っていなかった。先の2年間でB細胞の分化過程で転写因子Bach2の遺伝子発現量の変化は細胞分裂回数と相関関係があること、Bach2を含む数種の転写因子の発現パターンをシングルセルレベルで解析したところ、細胞分化過程で幾つかの特徴的な細胞集団に分かれることがわかった。本年度は、シングルセルPCRを実施し、48遺伝子の発現プロファイリングを実施した。このとき、先の2年間で得られた結果を踏まえ、B細胞を培養系で活性化後、細胞分裂回数ごとに分け、分裂回数が同一な集団からBach2の遺伝子発現が高い細胞集団と低い細胞集団由来の細胞をシングルセルソーティングした。これらの細胞に加え、クラススイッチしたIgG陽性細胞と形質細胞分化した細胞も対照としてシングルセルPCRにて解析を実施した。その結果、Bach2の遺伝子発現が低い細胞集団には既に形質細胞と非常に良く似た遺伝子発現パターンを持つ細胞が高頻度に含まれること、同様にBach2の発現が高い細胞集団にはクラススイッチしたIgG陽性細胞と類似の遺伝子発現パターンを持つ細胞が多いことが、主成分分析から見えてきた。シングルセル解析からBach2の遺伝子発現パターンは、細胞分化の指標として主要であることが判った。Bach2と連携して発現する転写因子の解析を進め、現在さらに詳細な解析をおこなって亜集団の存在が示唆する結果を得た。
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http://www.biochem.med.tohoku.ac.jp/