研究課題
プロテインホスファターゼ2Cε(PP2Cε)は、哺乳動物の小胞体に局在するプロテインホスファターゼで、ストレス応答経路や脂質輸送などの制御に関与する。個体におけるPP2Cεの機能を明らかにする目的でPP2Cε遺伝子欠損(KO)マウスを作成し、行動試験を行ったところ、運動機能の協調性や平衡感覚を評価するワイヤーハング試験およびバランスビーム試験において、遺伝子欠損マウスが異常な行動を示すことが明らかとなった。一方、組織学的解析の結果、線条体の縮小と、それに伴う脳室の拡大が観察された。さらに、左右の大脳半球を結ぶ交連神経である脳梁および前交連にも異常が認められた。ミエリン塩基性タンパク(MBP)抗体を用いて有髄神経を染め出したところ、大脳皮質と下部の神経核を繋ぐ神経線維が、著しく縮小・減少していることが観察され、線条体の縮小の原因が、ここを通過する神経線維の縮小・減少に起因することが示唆された。さらに、脳梁および前交連でも、そこを走行する神経線維の減少が著明に観察された。さらに、これらの神経線維の減少が神経回路の形成不全ではないかとの仮説の下、子宮内電気穿孔法によるGFP蛍光タンパク質の神経細胞における特異的発現やDiIなどの蛍光色素を用いた神経回路の標識を行い、中枢神経における神経回路形成を解析したが、野生型と遺伝子欠損型の間で顕著な違いが認められなかった。一方、胎生16日目の胚の大脳皮質の遺伝子発現をDNAアレイ解析で網羅的に解析し、ubiquitin遺伝子をはじめとしていくつかの遺伝子の発現変動を観察した。
3: やや遅れている
遺伝子欠損マウスで観察された神経線維の減少が神経回路の形成不全ではないかとの仮説の下、蛍光色素を用いた神経回路の標識を行ったが、野生型と遺伝子欠損型の間で顕著な違いが認められなかった.
遺伝子欠損マウスで観察された神経線維の減少が神経回路の形成不全ではないかとの仮説の下、蛍光色素を用いた神経回路の標識を行ったが、野生型と遺伝子欠損型の間で顕著な違いが認められなかった。そこで、神経線維の減少が神経細胞の細胞死によるものかどうか検討していく。この仮説が正しかった場合、その分子機構を培養細胞やin vitroの系を用いて明らかにしていく。
当該年度に予定してた特異的抗抗体の作製ができなかったため、当該年度の所要額が少なくなってしまったため。
今年度は抗体の作製を進めより詳細な解析を進める予定である。
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