研究課題
基盤研究(C)
マウス繊維芽細胞より誘導したiPS細胞について、DNA microarray解析を行い、iPS細胞誘導初期に発現が2倍以上減少し、またプロモーター部位にOct4とSox2の結合が認められる転写因子をスクリーニングし、20個の転写因子を候補遺伝子として選出した。まず、これらの遺伝子についてsiRNAで遺伝子ノックダウンを行い、iPS細胞誘導が増加するものを同定し、候補遺伝子を約半数に絞った。これらの転写因子をクローニングするために、マウス繊維芽細胞よりRNAを抽出しcDNAを合成した。各転写因子の配列を基にプライマーを設計し、cDNAより11個の遺伝子を単離し、塩基配列を確認した。これらのcDNAを用いて、各転写因子のレトロウイルスの発現ベクターを作製した。その後、これら候補遺伝子をレトロウイルスで過剰発現させた後に、Oct4, Sox2, Klf4, c-Mycを発現するセンダイウイルスベクターを用いてiPS細胞誘導を行った。これまでの結果より、Ebf1、Sox4及びc-Mafを過剰発現させた時のみアルカリフォスファターゼ陽性(以下、AP+)コロニー数が有意に減少した。これらの因子についてもう一度複数個のsiRNAを設計し、マウス繊維芽細胞の導入して、遺伝子発現が低下することを確認した。遺伝子発現低下に有効なsiRNAを用いて、Ebf1、Sox4及びc-Mafの発現を予め抑制した後、同様にしてiPS細胞誘導を行うと、AP+コロニー数が有意に増加した。以上の事より、iPS細胞の誘導には、Ebf1、Sox4及びc-Mafが低下する事が必要であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
マイクロアレイやクロマチン免疫沈降のデータベースから抽出した遺伝子について、そのcDNAを単離し過剰発現系を作製することができた。この過剰発現系とセンダイウイルスのiPS細胞誘導系を利用して候補遺伝子を絞り、さらにsiRNAによる遺伝子ノックダウンにより、iPS細胞誘導と3 個の遺伝子発現の関係を明らかにすることができた。
スクリーニングに用いた siRNAの結果が、作製したsiRNAの効率に影響されるので、同様の実験をノックダウンの条件を変えて行うとともに、さらに追加でsiRNAを作製し、他の転写因子もEBf1、Sox3、c-mafと同様の影響を及ぼすかどうか、検討する。また、既に同定できた 3 遺伝子については、その下流にある遺伝子(例えば細胞周期関連遺伝子)の制御について検討する。
siRNA用のRNAを既製品を用いずに、当研究室で設計したものを用いいたため、経費が大幅に削減できた。また、20遺伝子の実験の一部が終了していないので、次年度に行うことにした。20の候補遺伝子の幾つかはsiRNAの結果が不明瞭なものがあった。これらに関しては、既製品のsiRNAを購入し、ノックダウンとiPS細胞誘導効率の関係について確認する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
PLos One
巻: 8 ページ: e72496
10.1371/journal.pone.0072496
J Biol Chem
巻: 288 ページ: 31299-31312
10.1074/jbc.M113.461848