研究実績の概要 |
昨年までの研究より, Osr1, Ebf1, Ebf3, Meox2, Smarcd3及びPrrx1の各転写因子の発現が, マウス繊維芽細胞からiPS細胞を作製する際に阻害的に作用することが明らかとなった。これらの因子の発現がリプログラミング初期に急速に低下すること, また同時期にMET(間葉上皮転換)がみられることより, 各因子とMETまたはその逆の現象であるEMT(上皮間葉転換)との関連を検討した。TGF-β添加によりEMTがみられるマウス乳腺上皮細胞(NMuMG細胞)に, Osr1, Ebf1, Ebf3, Meox2, Smarcd3及びPrrx1の各遺伝子を導入し, EカドヘリンやNカドヘリンの発現変化を解析し, これらの因子の中でも特にEbf3がNMuMG細胞のEMTを促進することが分かった。このEMTの過程でEbf3が制御する下流遺伝子を検索した結果, Ebf3がSnail1, Snail2, Zeb1及びZeb2などEMTで重要な役割を果たす転写因子群が, Ebf3により制御されていることを見出した。以上の結果より, Osr1, Ebf1, Ebf3, Meox2, Smarcd3及びPrrx1の各転写因子は分化過程でEMTを制御しており, 逆にリプログラミングの初期には, これらの転写因子の発現が低下することにより, 細胞が間葉系の性質を喪失し, 上皮系へと変換して行くことが明らかとなった。
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