アポトーシスは不要な細胞を除去するために引き起こされるプログラム細胞死の一様式であり、細胞の分裂や分化・増殖と同様に生理的な細胞活動と捉えられている。また、アポトーシスの異常は、癌、自己免疫疾患、神経変性疾患など幅広い疾患と密接に関わっていることから、各々の疾患における病態を解明する上でアポトーシスの制御機構を解明することは極めて重要である。このような背景のもと、申請者はデスリガンドが誘導するアポトーシスを制御するキナーゼのスクリーニングを行い、8種類のキナーゼを同定した。 平成27年度は、CRISPR-Cas9システムを用いることで、同定されたキナーゼのノックアウト細胞を作成し、それぞれの細胞に野生型またはキナーゼ活性欠損変異体を再構築した細胞を樹立し、それぞれのキナーゼのアポトーシスへの必要性を確認することができた。また、2種類のキナーゼに関してはその基質の同定にも成功し、その分子機構の解析を進めてきた。特に、そのひとつであるSTK11は脱ユビキチン化酵素CYLDの925番目のセリンをリン酸化していることを突き止めた。また、CYLDの925番目のセリンをアラニンに変異させると、RIP1の脱ユビキチン化が起こらなくなり、アポトーシスを誘導するための複合体形成が阻害され、結果としてアポトーシス誘導が抑制されることが判明した。これらの結果より、STK11はCYLDのリン酸化を介してアポトーシス誘導複合体の形成を制御することでFasによるアポトーシスを制御していることが示唆された。
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