研究課題
基盤研究(C)
A20は、N末端側のOTUドメインとC末端側の7つのzinc fingerモチーフ(ZnF)より構成されており、OTUドメインを介してポリユビキチン鎖分解酵素として働く一方で、4番目のZnFを介してユビキチン結合酵素としても働くユニークなタンパク質である。ノックアウトマウスの解析などから、A20はこれらの酵素活性依存的にシグナル伝達因子の不活性化を導いて、炎症反応や細胞増殖・分化を制御するNF-κBシグナルの抑制因子として働くことが明らかになっている。しかし、申請者はこれまでに、プロテオーム解析にてA20の新規結合タンパク質の探索を行い、A20が7番目のZnFを介してユビキチン結合酵素cIAP1に結合すること明らかにした。cIAP1はNF-κBシグナルや細胞死シグナルの重要な制御因子であるから、これらのシグナル伝達系におけるA20とcIAP1との相互作用の役割について解析を行ってきた。cIAP1は、NF-κBシグナルを活性化するタンパク質リン酸化酵素NF-κB inducing kinase(NIK)の分解を誘導する機能を有することから、まず始めにこの機能とA20との関連を解析した。その結果、A20はcIAP1を抑制してNIKの安定化を導き、NF-κB活性化を誘導する機能をもつことを明らかにした(Yamaguchi N. et al. Scientific Reports 2013)。現在、cIAP1との結合能を欠損したA20変異体を発現するノックインマウスの作製を進めると共に、cIAP1の他の機能におけるA20の役割について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、cIAP1によるNIK分解活性におけるA20の役割の解析を進め、A20がcIAP1による分解活性を抑制してNIKを安定化しNF-κBを活性化することを明らかにし、Scientific Reports誌に論文発表した。現在、cIAP1の他の分子機能におけるA20の役割解析を進め、NF-κBシグナルのNIK以外の制御機構や細胞死制御機構も明らかになりつつあり、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
引き続き、cIAP1によるNF-κBや細胞死シグナル制御機能におけるA20の役割解析を進めるとともに、cIAP1結合能を欠損したA20 ZnF7変異体ノックインマウスの作製を進め、in vivoにおけるA20とcIAP1との相互作用の意義について解析を行う。
本年度に行った論文作成に予想以上に時間がかかり、実験を計画どおりに進められなかったため。翌年度は、繰越分の大部分を物品費にあてて研究を効率良く進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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