研究課題
基盤研究(C)
神経筋接合部(Neuromuscular junction: NMJ)は運動神経の軸索末端と筋管(筋繊維)上の後シナプス構造を連結するシナプスであり、運動神経による骨格筋収縮の支配に必須の役割を担っている。ほ乳類のNMJの形成や維持には、骨格筋に強く発現する受容体型チロシンキナーゼMuSKと、同じく骨格筋に強く発現し、MuSKの必須の細胞内活性化分子として働くDok-7により惹起される細胞内シグナル伝達系(MuSKシグナル)が重要であるが、その分子機構は殆ど解明されていない。そこで、本研究では、MuSKシグナルを正に制御する、または抑制する分子群を同定する。また、Dok-7によるMuSKの活性化機構を解明する。これらの成果をもって、NMJの形成や維持を担うシグナル伝達機構を解明し、また、当該シグナル伝達機構の異常を要因とする筋無力症や関連する神経筋疾患に対する治療法の開発に貢献することを目指している。本年度は、MuSKシグナルのリン酸化プロテオミクス解析を進めた結果、当該シグナルの構成分子の候補として、セリン・スレオニンキナーゼの一員が得られ、その機能解析を行った。また、上述のプロテオミクス解析の情報を in silico のパスウェイ解析により検討した。その結果、複数の既知のパスウェイがMuSKシグナルを制御している可能性が得られたため、これらのパスウェイの寄与についても検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
MuSKシグナルの正または負の制御分子として、細胞・個体レベルで実証された分子はまだないものの、MuSKシグナルのリン酸化プロテオミクス解析が予定通り進んでいる。
MuSKシグナル候補分子の発現抑制や強制発現を行い、当該シグナルの構成分子の同定を進める。Dok-7によるMuSK活性化に寄与する可能性のある分子については、すでに構築したin vitro MuSK活性化系を用いて、その可能性を検討する。
予定していた分子・細胞レベルの実験に先行して、in silico のパスウェイ解析を行うことにしたため、分子・細胞レベルの実験に使用する試薬の購入が使用予定額を下回り、当該助成金が生じた。MuSKシグナルの構成分子を同定するために、以下の分子・細胞レベルの実験を行う。(1) MuSKシグナルが働くNMJの後シナプス形成のモデル細胞を用いて、MuSKシグナルの候補分子の強制発現・発現抑制を行う。(2)Dok-7によるMuSK活性化に寄与する可能性のある分子については、in vitro MuSK活性化系により、その可能性を検討する。上述の実験を進めるために、細胞培養のための培地・血清、強制発現・発現抑制系の構築のための分子生物学実験用試薬、in vitro MuSK活性化系などを行うための生化学実験用試薬、を購入する必要があり、助成金を使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
FEBS Letter
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