研究課題/領域番号 |
25460357
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
手塚 徹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50312319)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 神経筋シナプス / 神経筋接合部 / 筋無力症 |
研究実績の概要 |
神経筋接合部(Neuromuscular junction: NMJ)は神経筋シナプスとも呼ばれ、運動神経の軸索末端と骨格筋の基本単位である多核の筋管細胞(筋繊維)を結ぶ唯一のシナプスであり、運動神経による骨格筋収縮の制御に必須の役割を果たしている。哺乳類のNMJの形成や維持には骨格筋に強く発現する受容体型チロシンキナーゼMuSK(Muscle-specific tyrosine kinase)によって筋管で惹起される細胞内リン酸化シグナル(MuSKシグナル)が重要である。本研究では、MuSKの活性化機構、および、MuSKシグナルを担う分子群を明らかにし、これらの成果をもって、NMJの形成・維持機構の解明と、当該機構の破綻を要因とする筋無力症などの神経筋疾患の理解および診断・治療法の開発に貢献することを目的としている。本年度は、MuSKの必須の細胞内活性化分子Dok-7によるMuSK活性化機構を個体レベルで解析した。その結果、マウス胚のNMJ形成過程において、Dok-7によるMuSKの活性化には、MuSKと複合体を形成する1回膜貫通蛋白質Lrp4(low-density lipoprotein receptor-related protein 4)が重要であることを見出した。他方、MuSKシグナルのリン酸化プロテオミクス解析およびin silicoのパスウェイ解析を進展させ、MuSKシグナルへの関与が示唆された複数の既知のパスウェイに関して、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MuSKの活性化におけるLrp4の新たな役割を個体レベルで示すことができた。また、MuSKシグナルのリン酸化プロテオミクス解析・パスウェイ解析も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
MuSKシグナルを正または負に制御する候補分子について、その強制発現・発現抑制実験を培養筋管細胞(C2C12細胞)および個体(マウス)に対して行い、当該シグナルの構成分子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
MuSKシグナルの解析について、in silicoのパスウェイ解析を予定より詳細に進めたため、分子・細胞・個体レベルでの実験の費用が予定額を下回り、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
MuSKシグナルの構成候補因子の強制発現・発現抑制実験を培養筋管細胞およびマウスに対して行い、MuSKシグナルを正または負に制御する因子を同定する。そのために、細胞培養やマウスの繁殖・維持、遺伝子導入のためのウィルスベクターの構築・精製、NMJ形成の組織・生化学的な解析に、当該助成金を使用する計画である。
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