研究代表者は、免疫細胞上の抑制レセプターPD-1の、ノックアウトマウスが自己免疫疾患を発症することから、PD-1による免疫調節機構について解析を進めている。自己寛容に必須であるPD-1が、幾つかの病態にはマイナスに働くという例が注目されている。例えばがんや慢性ウイルス感染といった、長期的な免疫反応を伴う疾患においては、T 細胞がPD-1 の非常に高い発現を呈し、エフェクターサイトカインを産生する能力を失った「疲弊T細胞」へと変化していく。標的となるがんや感染細胞には、PD-1 の生理的リガンドが高発現していることから、がんやウイルスは、PD-1 を利用して宿主から免疫逃避している、とも考えられる。本研究では、①既存の免疫関連遺伝子欠損マウスや②新規作成マウスモデルを用いて、PD-1の高発現を起こす要因と、ひいてはPD-1高発現の、免疫疲弊成立における意義を解析することを目的としている。本年度は、①の研究より、無処置マウスにおいてPD-1の発現を負に制御していると考えられるサイトカインを見出している。②については、マウスの作成途中であり、次年度以降の課題である。また、既存のPD-1抗体がPD-1ノックアウトマウスの細胞に対しても検出してしまうという技術的な問題があり、新しい抗体を用いることにより、非常に高感度でPD-1陽性細胞を検出することが出来るようになった。 これとは別に、PD-1が主に調節するT細胞を完全に欠損するRAG2ノックアウトマウスの解析から、PD-1がリンパ球以外の自然免疫担当細胞を抑制制御するという証拠を見出し論文報告した。
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