研究課題/領域番号 |
25460364
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮崎 純一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10200156)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ES細胞 / 未分化状態 / 遺伝子 / テラトーマ |
研究概要 |
未分化ES細胞特異的に発現する遺伝子として見出したCes1遺伝子の機能を解析するために、以下の実験を行った。 1)Ces1遺伝子のコードする蛋白(CES1)に対する特異的抗体の作成:CES1蛋白の一部とGST (glutathione S transferase)の融合蛋白を大腸菌で作成し、精製後、ウサギに免疫し、抗血清を作成した。CES1蛋白部分については、zinc finger motifなどを含まない、特異性の高いペプチド配列部分を選定した。得られた抗体を用いて、マウスES細胞を免疫染色し、CES1蛋白の核局在を確認した。この抗体を用いてCES1蛋白がwestern blot法により検出できることを確認した。コントロールとして、Ces1遺伝子ノックアウトES細胞を用いた。 2)遺伝子発現への影響の解析:ES細胞におけるCes1遺伝子発現の有無による他の遺伝子発現への影響を検討するため、Ces1遺伝子ノックアウトES細胞と過剰発現ES細胞の間でDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。4倍以上大きく発現の変化した遺伝子の一部についてはreal-time PCR法を用いて、発現レベルの詳細な比較を行い、マイクロアレイ解析の結果との整合性を確認した。 3)分化能への影響の解析:Ces1遺伝子ノックアウトES細胞のin vitro分化能を胚様体形成により調べたところ、大きな異常は見出されなかった。一方、in vivoでは、Ces1遺伝子ノックアウトES細胞はテラトーマの形成能を失っていることが判明した。これらの結果から、Ces1遺伝子のES細胞機能における重要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究により、CES1蛋白に対する特異的な抗体の作成に成功した。また、Ces1ノックアウトES細胞の解析も順調に進展しており、遺伝子発現の変化、in vitro分化、テラトーマ形成についてのデータが得られた。特に興味深いことに、Ces1ノックアウトES細胞はin vitro分化能を維持しているにもかかわらず、テラトーマ形成能を失っていることが判明した。予定していた実験計画は順調に進展しており、次年度の計画に進む予定である。本研究により得られる知見は、生命科学の重要な課題の1つとなっているES細胞の未分化状態維持機構の解明に有用な情報をもたらすと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) ChiP-qPCRによる解析:DNAマイクロアレイ解析により、Ces1欠損により大きく発現の低下する遺伝子が見出された。これらの遺伝子について、各発現制御領域へのCES1蛋白の結合をChiP-qPCRにより検討する。さらにこれら領域のCGメチル化をノックアウトES細胞、野生型ES細胞、rescue ES細胞の間でbisulfite sequencingにより検討する。 (2) 免疫沈降と質量分析によるCES1結合蛋白の同定:CES1は核蛋白であり、クロマチンに結合している可能性が高いと考えられる。核分画からCES1を免疫沈降し、共沈する蛋白をSDSポリアクリルアミド電気泳動、質量分析により解析する。 (3) キメラ形成能の検討:Ces1遺伝子ノックアウトES細胞をblastocyst injectionすることにより、キメラマウス作成を試みる。キメラマウスが作成できた場合、キメラ率の検討を行うとともに、生殖細胞系列への伝達を調べる。 (4) Ces1ノックアウトES細胞の増殖能・アポトーシスの検討:MTTアッセイにより、ノックアウトES細胞、野生型ES細胞、rescue ES細胞の間で、増殖能を検討する。さらにアポトーシスについて、これらの細胞間で比較する。
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