研究課題/領域番号 |
25460365
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊集院 壮 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00361626)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 骨格筋 / インスリン / SKIP / 小胞体 |
研究概要 |
本研究はホスホイノシチドホスファターゼSKIP(Skeletal muscle and kidney enriched inositol polyphosphate phosphatase)がPIP3の脱リン酸化を介して、骨格筋でのインスリンシグナルを負に制御した結果に基づいて始まったものである(Ijuin and Takenawa, J. Biol. Chem. 2012)。これまで、骨格筋は糖尿病の病態に積極的に関与する結果が得られていないが、全身の75%の糖代謝を占める組織であるため、糖尿病患者におけるインスリン抵抗性惹起の主因であると考えられている。本研究では、SKIPによる骨格筋でのインスリンシグナル制御機構を明らかにするとともに、骨格筋でのインスリン依存的な糖代謝を改善する方法の開発を目指している。本年度は、SKIPによるインスリンシグナル制御機構の解明を行い、小胞体に局在するSKIPが細胞膜に移行する機構を明らかにした。SKIPは骨格筋では細胞膜が陥入したT管と呼ばれる構造体に局在すること、小胞体上をSKIPが積極的に移動して、T管部分に局在していた。この筋小胞体とT管が接する部分(トライアッド構造)にはインスリン依存的なPIP3の産生が行われることが知られているが(Lauritzen et al. 2006)、この部分にSKIPの結合分子であるPak1が局在していることと、Pak1がscaffoldとしてPP2AやSKIPなどインスリンシグナルを負に制御するホスファターゼ分子を集めてくることを明らかにした。この結果は、骨格筋でのインスリンシグナルの制御が時間的・空間的に非常に精巧にコントロールを受けていることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成25年度は骨格筋由来の培養細胞でのSKIP結合分子の同定と複合体の単離を行う予定であった。その結果、Pak1を中心として複数のホスファターゼ分子が複合体を形成していることを明らかにし、骨格筋でのインスリンシグナルの時空間的制御の存在を新たに解明する結果を得ることに成功した。従って、当初の結果はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、SKIPの筋小胞体での機能解明をもとに、糖尿病の病態との関連を明らかにすることを目指している。SKIPが小胞体に存在する意義を細胞生物学的研究手法で解明するとともに、SKIPの発現制御およびホスファターゼ活性化機構を生化学的アプローチで解明する。骨格筋をターゲットとした新しい概念の糖尿病治療薬としてSKIP阻害剤の開発を目指すために、1)骨格筋におけるSKIPによるインスリンシグナルの解明、2)SKIP阻害剤開発に向けたPak1結合メカニズムの解明、3)糖尿病モデルマウスにおけるSKIPの発現制御機構を明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、培養細胞を使用したタンパク質複合体の単離実験を主体に行ったが、これはすでに確立された方法にしたがってため、新たな消耗品購入の必要がなかった。そのため、研究の遂行に必要な経費の削減が可能であった。 本年度のうち次年度使用額分は、SKIPノックアウト遺伝子組換え動物の作製費用と繁殖・飼育に必要な費用に充てる。また、作製したSKIPノックアウトマウスを用いた、組織切片作製実験や、耐糖能の解析実験にも充てる予定である。
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