研究課題/領域番号 |
25460366
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村田 陽二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60400735)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | チロシンホスファターゼ / 腸上皮細胞 / 腸管免疫 / 腸炎 / がん |
研究概要 |
研究代表者は受容体型チロシンホスファターゼSAP-1が消化管特異的に発現すること、また、SAP-1基質候補分子として膜蛋白質p100を単離同定し、両者により形成されるシグナル伝達系が腸管免疫を制御する可能性を見出している。そこで、SAP-1/p100シグナルによる腸管免疫制御とその病態的意義の解析を進め、本年度は以下の研究成果を得た。 I. p100遺伝子破壊(KO)マウスおよびSAP-1 KOマウスにおける薬剤誘導性の腸炎での発症度と重症度につき評価した。その結果、p100 KOマウスおよびSAP-1 KOマウスでは薬剤誘導性の腸炎に対して野生型マウスに比べp100 KOマウスでは感受性が高く、SAP-1 KOマウスでは抵抗性を示す傾向が認められ、両分子が腸管免疫制御に関与する可能性が示唆された。加えて、炎症性腸炎モデルマウスとして知られているIL-10 KOマウスとp100 KOマウスとの交配を進め、IL-10/p100二重遺伝子欠損マウスの腸炎の発症度および重症度を解析する段階へと至った。 II. 培養細胞を用いた過剰発現系の解析からp100がIL-8産生制御に関与する可能性を見出していた。そこで、p100が他のサイトカイン産生の制御に関与するかにつき検討したところ、炎症性サイトカインであるIL-6の産生制御にも関与することを見出した。さらに、p100 KOマウスおよび野生型マウス由来小腸陰窩細胞より形成した小腸organoidの培養系を用い、p100が炎症性サイトカイン産生の制御に関与するかを検討する段階へと至った。 III. p100およびSAP-1の細胞外領域に結合するリガンド分子の検索から、p100とSAP-1との細胞外領域を介した会合が認められた。一方で、腸管内容物中での結合分子の検索を行うためのスクリーニング系を構築し、スクリーニングを進める段階へと至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p100 KOマウスの作製ならびに薬剤誘導性腸炎モデルでの解析等が予定どおりに進行し、p100とSAP-1が腸炎の病態に関与する可能性を示す実験結果が得られつつある。また、in vitroの解析では、p100、SAP-1のシグナル系の解析やリガンド分子の同定についても、一定の実験結果が得られていることから、概ね順調に進行していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた研究成果を基盤に、SAP-1およびp100の下流シグナル分子の解析やリガンド分子の検索、腸炎を主体とした病態へのSAP-1/p100シグナル系の関連を腸上皮培養細胞、小腸organoid培養系、さらに遺伝子破壊マウスなどの動物個体を用いて行い、SAP-1、p100シグナル系の腸管免疫における役割とその作用機構の解明を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入した試薬の単価が予想額より低かったため。 試薬等の消耗品などの実際の購入費が予定購入額より低かったため、次年度使用予定であった予算が一部持ち越された。次年度は、持ち越し分を主に物品費(消耗品)に使用することで、次年度に行う本研究をより推進させる予定である。
|