ヒト肺腺がん細胞株PC-9を用いてRifの糸状突起形成への関与について検討した。RifをsiRNAを用いてノックダウンし、糸状突起の数を計測した結果、コントロールsiRNAで処理した細胞に比べRifノックダウン細胞では糸状突起の数が顕著に減少した。また、Rifのエフェクター分子として知られているアクチン核化因子mDia2のノックダウンによっても同様に糸状突起数の減少が認められた。PC-9細胞においては、Ror1が発現しているがRor2の発現は確認できなかったことから、次に、Ror1のノックダウンについて同様の解析を行った。その結果、Ror1ノックダウン細胞において、Rifノックダウン細胞と同様に糸状突起数の減少が認められた。次に、Ror1、RifのノックダウンがPC-9細胞の増殖に及ぼす影響を解析した結果、Ror1ノックダウン細胞、Rif ノックダウン細胞ともに増殖能が低下した。一方、mDia2ノックダウン細胞についてはコントロールと比べ増殖率に有意差は認められなかった。この結果は、糸状突起形成は細胞増殖には必要ではないことを示しており、したがって、Rifは糸状突起形成とは独立に細胞増殖を制御している可能性が示唆された。さらに、Ror1 やRif がPC-9細胞の浸潤能に関与する可能性について検討するため、matrigel invasion assayを行った。その結果、Ror1ノックダウン、Rif ノックダウンどちらも浸潤能を有意に抑制することが明らかになった。これらの結果から、Ror1とRifはPC-9細胞の糸状突起形成、増殖、浸潤をそれぞれ促進していることが示された。
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