研究課題
インスリン抵抗性の発現には、脂肪組織におけるマクロファージを中心とした慢性炎症が重要な役割を果たしている。Toll様受容体(TLR)は、主にマクロファージなどの免疫担当細胞に発現し、病原体センサーとして、生体防御に重要であるが、脂肪組織の炎症におけるTLR9の役割は明らかではない。TLR9は、主にマクロファージなどの免疫担当細胞が発現し、外来生物由来のDNAを認識することで生体防御に重要な役割を果たす一方、障害を受けた細胞から遊離する遊離核酸断片cell free DNA, cfDNA)をも認識し、自己免疫疾患に関わる慢性炎症を誘導することが報告されている。本研究では、「マクロファージにおけるcfDNA-TLR9シグナルが脂肪組織の慢性炎症を惹起し、インスリン抵抗性を誘導する」という仮説を立て、in vivoとin vitro実験で検証を行った。TLR9の活性化により、マクロファージから脂肪組織の炎症に重要な役割を果たすMCP-1やTNF-αなどの炎症性物質の発現が増強することが分かった。また、肥満マウスや肥満患者の血中のcfDNA濃度は、痩せた個体に比べて高いことや、脂肪細胞から遊離するcfDNAがTLR9を介してマクロファージの活性化することを見出した。これらの結果をin vivoで検証するため、TLR9欠損マウスに高脂肪食を与えて肥満を誘導したところ、野生型マウスに比べて脂肪組織の炎症やインスリン抵抗性の発症が軽度であった。また、TLR9の特異的阻害薬の投与により、肥満マウスにおけるインスリン抵抗性の発現は抑制されることが分かった。以上の結果から、肥満によって障害された脂肪細胞から遊離するcfDNAがTLR9を介してマクロファージを活性化することで、脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性の発症に関与することが分かった。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 5件)
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