研究課題/領域番号 |
25460370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
上田 夏生 香川大学, 医学部, 教授 (20193807)
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研究分担者 |
宇山 徹 香川大学, 医学部, 助教 (30457337)
坪井 一人 香川大学, 医学部, 助教 (80346642)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | N-アシルトランスフェラーゼ / N-アシルホスファチジルエタノールアミン / NAPE-PLD / 酵素 / 脂質メディエーター / 脂肪酸エタノールアミド / リン脂質 / PLA/ATファミリー |
研究概要 |
N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(NAPE)は、微量ではあるが自然界に広く分布するリン脂質であり、抗炎症・鎮痛・細胞保護・食欲抑制・マリファナ様神経作用等の様々な作用を示す脂肪酸エタノールアミド(N-アシルエタノールアミン、NAE)の前駆体として知られる。しかしながら、膜リン脂質からNAPEを生成する酵素「N-アシルトランスフェラーゼ」については不明な点が多い。最近我々は、既にがん抑制因子として発見されていた5種類のHRASLSファミリー・メンバー(HRASLS1-5)のすべてが同活性や他のリン脂質代謝活性を示すことを見出し、それぞれphospholipase A/acyltransferase (PLA/AT)-1-5と呼ぶことを提唱した。しかしながら、これらの分子が生体内でNAPEの生成に係わっているか否かはよくわかっていなかった。本研究課題では、ヒトやマウスの精巣・骨格筋・心臓・脳等で発現しているPLA/AT-1が生細胞内でNAPEを生成する可能性について検討した。ヒト、マウスおよびラットのPLA/AT-1をそれぞれ一過性に発現させたCOS-7細胞を [14C]エタノールアミンで代謝標識したところ、いずれの細胞でも[14C]NAPEと[14C]NAEが増加した。次にヒトPLA/AT-1を安定的に発現するHEK293細胞株を樹立し、LC-MS/MS法でNAPEとNAEの含量を野生株と比較すると、これらの分子の増加が認められた。さらに軟骨前駆細胞株ATDC5でもともと発現しているPLA/AT-1をsiRNAによってノックダウンしたところ、NAPE含量が対照細胞の半分程度に減少していた。以上の結果から、PLA/AT-1はin vivoでもNAPEを生成するN-アシルトランスフェラーゼとして作用する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画のうち、「PLA/AT-1-5のN-アシル転移酵素活性の検討」については、PLA/ATファミリーの5つのメンバーのうちで、ヒトやマウスの精巣・骨格筋・心臓・脳等で発現していて重要度が高いと考えられるPLA/AT-1の解析が進んだ。結果の一部は既に論文や学会発表で公表されている。「NAPE-PLD遺伝子欠損マウスの解析」については、同マウスに特殊な食餌を投与することで野生型と異なる表現型が出現する可能性の検討を進めている。「N-アシル-PE生成活性を有する酵素のスクリーニング」については、PLA/AT-1-5以外の候補分子の特定には至っていない。以上より、項目毎の達成度についての課題はあるが、全体として見れば概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の予備的検討により、タンパク質分子X(仮称)が PLA/ATファミリータンパク質による細胞内でのN-アシル-PEの生成を促進することを見出した。当初の研究計画に沿って進める予定でいるが、成果を効率的に挙げるために、このタンパク質分子Xの作用機序を解明することに重点を置きたい。その上で、当初計画のテーマも同時進行させる体制で研究を推進したい。
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