研究課題
N-アシルホスファチジルエタノールアミン(NAPE)は、微量ではあるが自然界に広く分布するリン脂質であり、様々な生物作用を示すN-アシルエタノールアミン(NAE)の前駆体として知られる。最近我々は、以前にがん抑制因子として発見された5種類の構造類似タンパク質のすべてが、ホスファチジルエタノールアミンからNAPEを生成する「N-アシルトランスフェラーゼ」活性を示す酵素であることを見出し、それぞれphospholipase A/acyltransferase (PLAAT)-1-5と命名した。我々は、PLAAT-1のmRNAに機能未知のアイソフォームが存在することを見出し、組換えタンパク質を動物細胞で発現させたところ、既知のPLAAT-1と同様にN-アシルトランスフェラーゼ活性を認めたが、細胞内局在が既知のものとは明らかに異なることを見出した。PLAAT-3については、リン脂質代謝酵素活性を示すのに加えて、動物細胞で発現させると小器官のひとつであるペルオキシソームを特異的に減少させること、さらにはペルオキシソームの生成に関わるペルオキシンのひとつであるPex19pと結合して、Pex19pのペルオキシソーム膜タンパク質との結合を阻害することを見出した。一方、NAPEからNAEの生成経路としては、NAPE-PLDと呼ばれるホスホリパーゼD型酵素が触媒する以外に、リゾ体(lysoNAPE)を経由する多段階経路も存在する。我々はlysoNAPEを加水分解してNAEを生成するリゾホスホリパーゼD(lysoPLD)型酵素の候補としてグリセロホスホジエステラーゼ(GDE)4を検討し、動物細胞で発現させたマウスGDE4がそのような活性を示すことを明らかにした。GDE4 mRNAはマウスの種々の臓器に分布しており、GDE4はNAEの生合成に関わる新規lysoPLD型酵素であると考えられた。
香川大学医学部生体分子医学講座生化学ホームページhttp://www.med.kagawa-u.ac.jp/~biochem/index.html
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