研究課題
基盤研究(C)
これまでの解析でNF90-NF45 double transgenic (dbTg)マウスの骨格筋では核が中心に局在し(中心核)、未成熟な筋繊維が多く存在することが分かっている。この中心核は筋疾患(ミオパチー)においてしばしば観察されるため、本研究課題でNF90-NF45 dbTgマウスにおける中心核の発生機序を明らかにすることは、ミオパチーの発症機序の解明や当該疾患の治療法の開発において有益な情報になるものと考えている。そこでまず我々は、NF90-NF45がマイクロRNA(miRNA)生合成を負に制御することに着目し、野生型とdbTgマウスの骨格筋におけるmiRNAの網羅的な発現解析を行った。その結果、dbTgマウスで筋成熟に関与するmiR-133aの発現低下を見出すことができた。我々はこれまでにNF90-NF45はpri-miRNAに結合し、そのプロセッシングを抑制することでmiRNAの生合成を負に調節することを見出している。そこでmiR-133aの初期転写産物(primary: pri-miR-133a )に対するNF90-NF45の結合能とNF90-NF45がpri-miR-133aのプロセッシングに及ぼす影響を検討した。その結果、NF90-NF45はpri-miR-133aに直接結合し、そのプロセッシングを抑制することを見出した。miR-133aの標的の1つであるDynamin2 (Dnm2)は、その発現上昇が中心核発生の要因になることが知られている。そこで野生型とdbTgマウスの骨格筋におけるDnm2の発現を解析した。その結果dbTgマウスの骨格筋でDnm2の発現が増加していた。これらの解析結果より、dbTgマウスの骨格筋における中心核の発生は、NF90-NF45によるmiR-133aの産生抑制を介したDnm2の発現促進によるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、NF90-NF45 dbTgマウスの骨格筋において筋繊維の中心核化及び未成熟化に影響を及ぼす可能性があるmiRNAとその標的因子を同定することができた。
1. 平成25年度の計画遂行で、個体レベルにおいて筋繊維の中心核化・未成熟化を引き起こすmiRNA及びその標的因子の発現制御にNF90-NF45が関与することを示すことができた。今後は、個体レベルで明らかになったNF90-NF45による筋成熟関連miRNA及びその標的因子の産生制御を確証するために、主に下記の点をNF90-NF45の発現を変動させた骨格筋由来の培養細胞を用いて検証する。・個体レベルで同定したmiRNAとその初期転写産物であるpri-miRNAの発現解析・個体レベルで同定したmiRNAの標的因子の発現解析・In vitroにおける筋成熟化への影響これらの解析を行うことにより、NF90-NF45が骨格筋の中心核化・未成熟化を引き起こすメカニズムを明らかにする。2. 申請者らはこれまでにNF90 Tgマウスを作成し表現型の解析を行ってきた。その結果、Tgマウスは筋組織においてミトコンドリアが変性しており、それに伴い筋量・筋力及び心機能の低下が確認された。またこのミトコンドリア変性は、核内ミトコンドリア遺伝子発現のマスター制御因子PGC-1, NRF-1の産生が翻訳レベルで抑制され、オートファジーが誘導された結果であることが分かった。しかしながら、NF90の過剰発現により何故PGC-1やNRF-1の翻訳が抑制されるのかは不明のままである。本課題ではこの点を解明することも目指している。
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Journal of Gastroenterology
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00535-013-0852-8