研究実績の概要 |
昨年度までの解析より、我々はNF90-NF45過剰発現(dbTg)マウスの骨格筋ではNF90-NF45-miR-133-Dynamin (Dnm)経路が活性化することで中心核化を伴う筋萎縮を引き起こすことを見出した。本年度は、NF90-NF45がmiR-133に加えmiR-1やmiR-378といった他のmyogenic miRNAの産生も抑制することを見出した。そこでdbTgマウスの骨格筋においてmiR-133,-1,-378の標的となる候補因子を探索するためにマイクロアレイ解析を実施した。その結果、野生型マウスと比較し、dbTgマウスの骨格筋において725遺伝子の発現が2倍以上増加していた。その中よりmiR-133,-1,-378の標的候補をmiRNA標的予測プログラムであるTargetScanを用いて探索した。 その結果が下記となる。 miR-133 Targets: Aifl1, Atp6ap2, Col8a1, Srgap3, Vat1 miR-1 Targets: Anxa2, Anxa4, Atp6ap2, Atp6V1a, Azin1, Colo1b, G6pdx, H3f3b, Serp1, Sh3bgrl3, Zfp36 miR-378 Targets: H3F3b, Vat1 次に、これらの中から、中心核化を引き起こすアクチンや微小管の制御に関与する因子をGene ontology解析を用いて調べた。その結果、Aifl1, Coro1b, G6pdx, Serp1, Sh3bgrl3がそれらの機能を有する可能性を見出した。従って、dbTgマウスの骨格筋の中心核化には、NF90-NF45-miR-133-Dnm2の経路に加え、miRNAの産生制御を介して上記の5因子が関与する可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、個体レベルで確認されたNF90-NF45によるmiR-133-Dnm経路の活性化を骨格筋由来の培養細胞株を用いて検証することが含まれていた。この点に関しては、マウス骨格筋由来の筋芽細胞であるC2C12細胞を用いて解析を行った。NF90-NF45を一過性に高発現させ、miR-133,-1,-378の初期転写産物(pri体)及び成熟型miRNAの発現を測定した。しかしながらNF90-NF45の一過性の過剰発現によるpri体の蓄積及び成熟型miRNAの低下は確認されなかった。C2C12細胞においては筋芽細胞から筋菅細胞への分化に伴い、miR-133,-1,-378の発現が顕著に増加することが報告されている。従ってこれらのmiRNAの生合成におけるNF90-NF45の影響を検証するためにはNF90-NF45の安定発現株を樹立し、その細胞株を用いて筋分化を誘導し当該miRNAの産生量の変動を解析する必要があると考えられる。 一方、「NF90-NF45-miR-133-Dnm経路の活性化が中心核を伴う骨格筋の萎縮を引き起こす」という我々が発見した知見はMolecular and Cellular Biologyに論文として発表することができた。
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