研究課題
1. 二本鎖RNA結合蛋白質であるNF90-NF45が過剰発現している遺伝子改変マウスの骨格筋は多くの筋繊維において核が組織の中心に局在 (中心核) している。一般に中心核を有する筋繊維は未成熟な状態にあり、骨格筋が損傷後再生する段階で多く確認される。従って、NF90-NF45は骨格筋が再生する過程に影響を及ぼしている可能性が考えられた。そこで本年度は骨格筋再生におけるNF90-NF45の役割を明らかとすることを目指し、解析を試みた。骨格筋再生はヘビ毒素であるカルディオトキシン(CTX)をマウスの下肢に筋肉注射することで筋損傷を惹起させ、その再生過程をモデルとして用いた。CTXを投与した筋組織は、Day1-3まで損傷が激しく、Day5-7で再生が進み、Day14-28で筋繊維は成熟した。一方で、NF90-NF45はCTX投与後Day3-7でその発現が顕著に増加し、その後発現は低下した。これらの解析結果より、筋再生の初期過程の促進にNF90-NF45が影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後、この可能性を検証するために、In vitroで筋分化を誘導することが可能な骨格筋由来の細胞株を用いることで、NF90-NF45の発現を低下もしくは欠失させることによる筋分化への影響を検討する予定である。2. NF90 過剰発現マウスは骨格筋で蛋白質合成が低下している。一方、当該マウスは骨格筋においてミトコンドリアが変性しているにも関わらず長期生存可能である。従って当該マウスの長期生存は蛋白質合成低下によるATP消費量の減少に起因することが考えられた。このことをIn vitroで検証するために、細胞の主なATP供給源であるグルコースを除いた条件下におけるNF90過剰発現HEK293細胞及びコントロール細胞の生存曲線を解析した。その結果、両細胞間で生存率に顕著な差異は確認されなかった。従って、現時点では、NF90が有する蛋白質合成抑制能を介したATPの収支バランスの調節をIn vitroの系で確認するに至らなかった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Hepatology Research
巻: - ページ: -
10.1111/hepr.12587
MethodsX
巻: 2 ページ: 469-474
10.1016/j.mex.2015.11.007
生物物理化学‐電気泳動‐
巻: 59 (2) ページ: 82-84
http://doi.org/10.2198/electroph.59.82