研究課題/領域番号 |
25460376
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
石垣 靖人 金沢医科大学, 総合医学研究所, 准教授 (20232275)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | RBM8A(Y14) / 中心体 / M期 / アポトーシス |
研究概要 |
ヒト細胞増殖におけるMagohとY14(RBM8A)の役割を明らかにするために、それぞれの因子をsiRNAによるノックダウンを用いて細胞から除いた際に与える効果を明らかにした。腫瘍細胞由来培養細胞を用いてsiRNAによるMagohとY14のノックダウン実験を行い、細胞への影響を解析した。ノックダウンには同一遺伝子内で複数の配列を認識するsiRNAを準備して行い、確実な結果を得た。細胞周期進行はフローサイトメーターにより経時的に解析した。さらに染色体標本を作製し、Mitotic indexおよび染色体安定性について解析してみた。ダブルチミジンブロック法により細胞周期をG1/S期に集積してから培地を交換して細胞周期進行をリリースさせることによって、G2/M期進行を特異的に解析した。さらに、単純な免疫染色やDuoLink法を活用することにより、培養細胞内における局在と集積の様子を形態学的に明らかにした。次に、ノックダウン細胞における中心体および微小管形成を観察することにより、両方の因子が中心体の成熟にかかわることを明らかにした。また、次年度以降の研究を迅速に進めるために、様々なY14変異体発現ベクターの構築を開始し、siRNAライブラリーによるスクリーニング系構築などの予備実験を開始している。また、ヒト神経幹細胞モデルを導入し、これまで観察されてきた事象が神経細胞においても観察できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細胞周期進行におけるMagoh-Y14(RBM8A)複合体の役割を解き明かすことを目指し、以下の3点について実験を行い、未知の細胞分裂機構を提案することを目指している。(1) 細胞増殖におけるMagohとY14の役割を明らかにするために、それぞれの因子を細胞から除去した際に増殖や中心体に与える効果を明らかにする。(2) MagohとY14の細胞内における局在をより詳細に明らかにし、結合しうる中心体構成因子を明らかにする。また、様々な部位の変異体を作製して発現させ、中心体への局在や中心体因子との相互作用に必要な部位を探索する。(3) 細胞機能制御に必要な修飾部位、修飾のメカニズムおよび、その役割を変異体発現系により明らかにする。さらに修飾に関わる分子群を明らかにする。以上より、胎児期の神経細胞の増殖異常が原因とされるMagoh欠損マウスの小頭症発症の分子メカニズムを探る。今年度は、(1)として記載した因子群のノックダウン実験について腫瘍細胞における結論を得ることができた。Y14およびMagohのノックダウンは細胞周期M期での集積を引き起こし、続いてアポトーシスを誘導することが明らかとなった。従って、両因子は細胞の正常なM期進行に必須であると結論された。さらに中心体への効果を解析すると、両者は中心体の正常な成熟に必須であることが示唆される結果を得た。このため、両遺伝子の発現欠損は異常な中心体の集積を招き、その結果としてMitotic checkpointを活性化させてCaspase経路を活性化して細胞死を誘導すると結論した。このとき、両因子が中心体因子と共局在して中心体に集積していることを突き止め、(2)の細胞内局在に関する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はY14およびMagohに結合し、特異的な修飾を行っている中心体構成因子を明らかにしていく予定である。また、様々な修飾部位の変異体を作製して細胞内へ導入・発現させ、中心体への局在や中心体因子との相互作用に必要な修飾部位を探索する。さらに、細胞機能制御に必要な修飾部位、修飾のメカニズムおよび、その役割を変異体発現系により明らかにする。さらに修飾に関わる分子群を明らかにする予定である。Y14は複数のリン酸化部位を持つことから、特にリン酸化を受けることが予想されるセリンを中心に解析を進める予定である。既にキナーゼ特異的なsiRNAライブラリーは導入済みであり、基礎的なスクリーニング条件を検討中である。このライブラリーはキナーゼドメインをもつことが知られている800遺伝子を網羅しており、それぞれをノックダウン後にPhos-tagゲルによる分離でリン酸化を解析していく予定である。また、各種リン酸化部位の変異体を作製しており、今後変異体の細胞への導入が、どのような効果を及ぼすのかを解析していく予定である。また、中心体へ局在する複合体がどのような因子で構成されているのか、あるいはRNA分子とともに局在しているのかについては、今後本研究をベースとして考察していかないといけない課題であると考えている。また、現在は扱いやすい材料である腫瘍由来細胞を主に扱っているが、すでに導入して予備的な免疫染色実験を行っている不死化神経幹細胞についても、詳細な検討を行っていく予定である。
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