研究課題
基盤研究(C)
1.巨核球系MEG-01細胞の培養上清にビオチン化低分子アミン基質(BAPA)を添加して培養すると、核分画の複数のタンパク質がビオチン標識された。MEG-01細胞から調製した核分画を用いて、カルシウムイオン濃度依存性にBAPAがタンパク質に取り込まれた、トランスグルタミナーゼ(TGase)阻害剤によりBAPAの取り込みが阻害され、抗XIII因子Aサブユニット(FXIII-A)抗体、抗組織型TGase抗体により、それぞれ異なるタンパク質へのBAPAの取り込みが抑制された。また、MEG-01細胞の核抽出物を活性化FXIII-Aと反応させた場合、細胞および核分画と同様のタンパク質へのBAPAの取り込みが認められた。2.組換えFXIII-Aセファロースを作製して核抽出物内相互作用タンパク質の検索を試みたが、特異的に結合するタンパク質は検出されなかった。3.ストレプトアビジンアガロースを用いて、MEG-01細胞の核分画および核抽出物を用いた反応でBAPAを取り込んだタンパク質を回収し、質量分析を行った結果、複数のFXIII-A基質候補タンパク質が同定された。4種類の候補タンパク質に対する抗体を用いて、いずれも核分画に存在することをウェスタンブロット解析にて確認した。また、免疫沈降実験から、少なくとも1種類の候補タンパク質にBAPAが直接取り込まれていた。4.培養上清にインターロイキン(IL)-3およびトロンボポエチン(TPO)を添加してMEG-01細胞の分化・成熟を誘導したところ、核分画のFXIII-A量および核分画へのBAPAの取り込みの増加が観察されたが、組織型TGaseの存在は検出されなかった。5.単球系THP-1細胞について、未処理およびフォルボールエステルによるマクロファージ分化処理した細胞を用いて解析を行ったが、核分画でのBAPAの取り込みは検出されなかった。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に実施する予定であった、大量発現により調製した基質タンパク質(候補)による直接的な証明には至っていない一方で、平成26年度に計画していた細胞分化・成熟に関する実験を先行して行っていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
1.平成25年度の研究ではTHP-1細胞でのBAPAの取り込みが検出されなかったが、検出方法や感度を再検討して実施する必要がある。2.複数の候補タンパク質が同定されたことで、個々の機能の面から多様な解析を行う必要がある。まずは本当にFXIII-Aの細胞内基質であるかどうかを早々に確定させて、過剰発現やノックダウンによる細胞機能への効果を調べていく予定である。さらには、FXIII-Aや組織型TGaseのノックアウトマウスを用いて、個体レベルでの細胞内基質・TGase反応の役割を明らかにしていきたい。3.FXIII-Aは酵素前駆体であり、如何にして細胞核内で活性化するかを明らかにする必要がある。組換えFXIII-Aセファロースに結合するタンパク質が検出されなかったことから、核抽出物を生化学的に分画して、FXIII-Aの活性化を促す因子を検索する予定である。
実験の実施により、トロンボポイエチン、IL-3、抗イソペプチド抗体などの試薬を消費したが、納期が年度内に間に合わないため、次年度に購入を延期した。平成26年度にトロンボポイエチン、IL-3、抗イソペプチド抗体を平成26年度前半に前年度予算と新年度予算の消耗品費を合わせて発注する。
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