研究課題/領域番号 |
25460379
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
惣宇利 正善 山形大学, 医学部, 准教授 (20292419)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質架橋結合 / 細胞内基質 / 凝固第XIII因子 / トランスグルタミナーゼ / 巨核球 / 単球 / 細胞核 / 分化・成熟 |
研究実績の概要 |
1.細胞内での核(細胞骨格)タンパク質へのアミン取り込みにおける凝固XIII因子Aサブユニット(FXIII-A)の関与について:FXIII-A欠損、組織型トランスグルタミナーゼ(TGM2)欠損の各マウスから採取した骨髄細胞をトランスグルタミナーゼのビオチン化低分子基質(BAPA)とインキュベートし、蛍光免疫染色を行ったところ、TGM2欠損骨髄細胞のうちFXIII-A陽性細胞、CD61陽性細胞(巨核球)にBAPAの取り込みが検出され、FXIII-A欠損骨髄細胞ではCD61陽性細胞におけるBAPAの取り込みは観察されなかったことから、巨核球におけるFXIII-A活性の寄与が強く示唆された。 2.核分画のFXIII-A基質タンパク質について:巨核球系MEG-01細胞をBAPAやポリアミン存在下で培養し、昨年度に同定した4種類の基質候補タンパク質についてウエスタンブロット解析を行ったところ、いずれも核分画中の量の低下を認め、1種類は断片化が観察された。プロテアソーム阻害剤存在下で細胞をポリアミン処理した結果、基質候補タンパク質の核分画における減少・断片化が抑制された。ポリアミン処理による核分画での減少・断片化はまた、トランスグルタミナーゼ活性阻害剤で抑制された一方で、ユビキチンリガーゼ阻害剤では抑制されなかったことから、アミン化による、ユビキチンを介さない新たなプロテアソーム分解機構の存在が示唆された。 3.FXIII-A活性化因子について:核分画からの抽出条件や種々の分画法を検討し、ゲル濾過においてFXIII-A活性化活性がvoid分画に溶出されることから、FXIII-A活性化因子は巨大なタンパク質複合体に含まれていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までで、同定した4種類のうち2種類のタンパク質はFXIII-AもしくはTGM2の基質であることがほぼ確定したが、他にも多数の基質が存在することは確実である。また、FXIII-A活性化因子も同定には至っていない。一方で、FXIII-Aが少なくとも巨核球細胞内で活性を持って機能しうることをFXIII-AおよびTGM2それぞれの欠損マウスを用いた解析から確認できたことは確実な進展である。さらに、トランスグルタミナーゼ活性によるアミン化が、ユビキチンを介さないタンパク質のプロテアソーム分解を促すことを見いだしたことは、特に核タンパク質の分解調節機構における新規の概念をもたらす可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成25年度の質量分析で、4種類以外にも多数の基質候補タンパク質を同定している。可能な限り抗体を入手するとともにcDNAを調製して、基質であるか否かを決定していく予定である。 2.基質であることがほぼ決定的である2種類については、MEG-01細胞やマウス骨髄から単離した巨核球での過剰発現あるいはノックダウンを行い、特に細胞分化・成熟における影響を検討する。 3.FXIII-A活性化因子の適切なスクリーニング法および分画法を検討し、同定もしくはその候補を数種類まで絞れるよう進展させる。また、細胞内活性化において活性化ペプチドの切断が必要であるか否かを、切断部位の変異体を作製して確認する。 4.野生型、FXIII-A欠損、TGM2欠損の各マウスにBAPAやポリアミンを投与し、個体におけるアミン取り込みの有無や取り込まれる組織・細胞の違い、血小板産生への影響等を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
FXIII-A活性化因子に対する抗体の購入を計画していたが、年度内に同定に至らなかったために次年度へと持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
FXIII-A活性化因子の候補が数種類まで絞れた場合には、その候補に対する抗体を購入する。同定が困難な場合、既に同定済みの基質候補タンパク質に対する抗体を購入する。
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