1. 核分画のFXIII-A基質タンパク質について:(a) 昨年度までに同定した基質候補タンパク質のうち4種類について、誘導発現系を用いてBaby hamster kidney (BHK)細胞でcDNAの発現実験を行った。1種類は、FXIII-Aと共発現した場合に細胞核内でタンパク質分子へのアミンの取り込みが確認され、またFXIII-A発現に依存した部分的な分解も検出された。別の候補は、cDNA発現細胞から精製したタンパク質について、in vitroでFXIII-Aの基質となることを確認した。(b) cDNA発現実験において、2種類の候補がFXIII-Aの基質とは認められなかったことから、MEG-01細胞核からのアミン取り込みタンパク質の調製法を改変の上、質量分析により再検索したところ、(a)で基質であることが確認された2種類を含む15種類の候補が同定され、それぞれの候補について、アミン取り込み部位が推定された。このうち、11種類について、MEG-01細胞の核に発現していることをウエスタンブロット解析により確認した。 2. 細胞核内でのFXIII-A活性化について:(a) BHK細胞において、FXIII-A cDNAを導入した場合に著しい核分画タンパク質へのアミン取り込みが検出された。BHK細胞でのタンパク質アミン修飾はFXIII-Aの触媒残基変異体を導入した場合には検出されないことから、巨核球以外の細胞においてもFXIII-Aが核でトランスグルタミナーゼとして機能しうることを確認した。また、活性化部位(トロンビン切断部位)変異体について、核抽出物によるin vitroでの活性化反応、導入細胞内における核内タンパク質アミン取り込み反応はいずれも野生型と同程度であったことから、血液凝固反応(血漿中)と異なり、細胞核内でのFXIII-Aの活性化は限定分解を要しないことが強く示唆された。(b) 細胞核内のFXIII-A活性化因子について、DNase処理により核分画からの抽出効率が顕著に増加することから、核内クロマチンに含まれるタンパク質である可能性が示唆された。
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