研究課題
基盤研究(C)
腸管神経細胞が増加している遺伝子改変マウス(Ncx KOマウス、Kif26a KOマウス)を用いて腸管上皮細胞の構築、腸内フローラ、腸管免疫についての解析を行った。(1) Ncx KOマウス腸管神経節においては一酸化窒素(NO)産生ニューロンが増加している。Ncx KOマウスにおいては腸管神経細胞由来のNOが上皮細胞に作用し、β-cateninのSNO化、E-cadherinのジャンクションからの解離をきたし上皮細胞バリア機能が破綻するとの仮説をたてた。この仮説の検証のために以下の実験を行った。(a)Ncx KOマウスの腸管上皮細胞におけるS-nitrosylationについてウエスタンブロットにて解析したところS-nitrosylationされた蛋白が増加していた。(b)nNOS特異的な阻害剤L-NPAをNcx KOマウスに投与しE-cadherinの発現および腸管透過性について解析したところ、L-NPA投与によりE-cadherinの発現は増加した。(c)抗ニトロチロシン抗体によりNcx KOマウスの腸管を免疫染色しNO産生について解析したところ、一部の上皮細胞において濃く染色される細胞が見いだされた。(3)同じケージ内で飼育しているNcx KOおよび野生型マウスの糞便より経時的にDNAを抽出する。各細菌特異的な16SrRNAのプライマーを用いquantitative real-time PCRを行い腸内細菌フローラについて質的・量的な解析を行ったところKOマウスにおいてはEnterobacteriaceaeの増加、およびBifidobacteriumの減少傾向が認められた。(4)Ncx KOマウスの腸管免疫系について解析を行い神経由来NOの腸管免疫系制御響について解析をおこなった。Ncx KOマウスおよびKif26a KOマウスともに糞便中のIgAの減少傾向が認められた。以上の結果よりNcx KOマウス、Kif26a KOマウスともに腸内フローラにおいてdysbiosisが起きていることが示唆され、腸管神経細胞増加にともなうNOによるものであることが推測された。
2: おおむね順調に進展している
腸管上皮細胞のバリア機構の低下が腸管神経増加にともなうNOによるものであることが明らかとなった。また、腸管神経細胞増加によりdysbiosisをおこすことも明らかとなった。これらの成果は第42回日本免疫学会において講演発表を行った。
Ncx KOマウスにおける上皮細胞バリアと神経細胞増加の関連がほぼ明らかとなったが、腸内フローラとの関連についてもより詳細に詰めていく予定である。次世代シークエンサーを用いた腸内細菌層の解析も視野にいれ進めていく予定である。また、免疫系の異常についても今後重点を置いて解析する。同様の表現系を持つKif26a KOマウス、Nczfヘテロマウスについても解析を進め、腸管神経系と腸管免疫、腸管バリア機構の相互関係について分子レベルで明らかにする。
消耗品の一部が他の経費により購入できたため。試薬等消耗品の購入に使用する。
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