研究課題/領域番号 |
25460382
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 博 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (00115239)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マトリックスメタロプロテアーゼ / MT1-MMP / HAI-1 / マトリプターゼ |
研究概要 |
我々はこれまでに膜型マトリックスメタロプロテアーゼー1(Membrane-Type Matrix Metalloproteinase-1, MT1-MMP)の新規基質として膜型セリンプロテアーゼ阻害因子Hepatocyte Growth Factor Activator Inhibitor-1 (HAI-1) を同定した。上皮系がん細胞ではMT1-MMPがHAI-1を切断することにより、膜型セリンプロテアーゼであるマトリプターゼが活性化され,MT1-MMPとマトリプターゼの協調作用が浸潤性増殖には必須であることを報告した。上皮系がん細胞ではマトリプターゼをノックダウンすることによりMET (mesenchymal-epithelial transition) が起こることが報告されている。今回、我々はMT1-MMPにより切断されない変異型HAI-1の作成に成功し、この変異型HAI-1を用いてMT1-MMPのHAI-1切断の意義、セリンプロテアーゼのがん細胞運動・浸潤への関与を検討した。マトリプターゼを発現しない間葉系細胞HT1080細胞にMT1-MMPに切断されない変異型HAI-1を発現させることによりMET様の形態変化を起こすことを見出した。変異型HAI-1を発現するHT1080細胞は親株と比較して明らかに浸潤能・運動能が低下していた。間葉系細胞で発現しその形態維持に関わるセリンプロテアーゼの同定、およびMET誘導のメカニズムを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MT1-MMP/HAI-1相互作用の解析: HAI-1は上皮系細胞においてマトリプターゼと同一の細胞で産生され、両者は複合体を形成して細胞膜上へ輸送される。両者とMT1-MMPを強制発現させとトリプル複合体の形成を免疫沈降で確認することができた。 細胞運動・増殖・浸潤・転移における機能解析: 口腔扁平上皮がんHSC-4細胞のファイブロネクチン上での細胞運動およびERKリン酸化における各分子の機能をsiRNAを用いて検討した。これまでのところ、MT1-MMPのsiRNAが細胞運動およびERKリン酸化を低下させることを見出した。 HAI-1変異体を用いた解析とその応用: 切断点のアミノ酸を置換しMT1-MMPにより切断されない変異体、セリンプロテアーゼ阻害部位を変異させた変異体、両部位を置換した変異体の発現プラスミドを作成した。それらを上皮系細胞、間葉系細胞に発現させ、運動・浸潤能などを検討することに成功した
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今後の研究の推進方策 |
現在、HAI-1変異体を用いた解析が最も順調に進行しており、より多種類の細胞株を用いて、より広範な細胞機能に対する効果を検討しようと計画している。細胞機能としてファイブロネクチンの重合、マトリックス形成に対するMT1-MMPの機能解析が別途進行しており、非常に興味深い結果を得ている。よって本活性に対するHAI-1/マトリプターゼ系の関与を新たに検討する予定である。
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