研究課題
膜型セリンプロテアーゼ阻害因子であるHAI-1 (HGF Activator Inhibitor-1)は広くセリンプロテアーゼを阻害することによりがんの浸潤・転移を始めとする悪性化形質を抑制している。我々はこれまでに膜型MMPであるMT1-MMPがHAI-1 を切断・不活化することより、セリンプロテアーゼ活性化カスケイドをトリガーすることを見出した。さらにMT1-MMPに切断されないHAI-1変異体を作成することに成功した。このMT1-MMPに耐性のHAI-1変異体をヒト繊維肉腫細胞HT1080に発現させると形態変化、浸潤・運動能が低下し、その際、HAI-1変異体には、分子量3万前後のセリンプロテアーゼの結合が認められた。引き続き、プロテアーゼの同定を試みている。また、金沢大学がん進展制御研究所の大島教授との共同研究で、大腸がんモデルマウスをゼラチンザイモグラフィーにて解析し、炎症・発がんから浸潤を伴う悪性化の各過程において、MT1-MMPは炎症段階から発現量が増加し、浸潤部位においてはMT1-MMPの発現がさらに更新すると共に、新たに分子量2-3万程度のセリンプロテアーゼ様活性が顕著になることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
野生型HAI-1とMT1-MMPで切断されない耐性HAI-1を比較すると、MT1-MMPを発現するHT1080細胞において、MT1-MMP耐性HAI-1のみが形態変化、浸潤・運動を抑制したことから、MT1-MMPがHAI-1活性を制御していることが証明された。また、HAI-1の標的セリンプロテアーゼと予想されるプロテアーゼ活性を検出した。大腸がんモデルマウスの解析により、浸潤部位特異的なセリンプロテアーゼの検出に成功した。
これまでにMT1-MMP抵抗性HAI-1を用いて、浸潤性の高いHT1080細胞における浸潤・転移にMT1-MMPと共にセリンプロテアーゼも関与することが示唆された。MT1-MMP抵抗性HAI-1と複合体を形成するセリンプロテアーゼを同定する。また、マウス大腸がんモデルで浸潤性部位特異的に発現が誘導されるセリンプロテアーゼ様活性についても同定を試みる。セリンプロテアーゼ阻害剤の浸潤・転移に対する効果を改めて検討する。
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