研究課題
膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)の機能のひとつに細胞膜タンパクの切断・シェディングがある。我々は、MT1-MMPが膜型のセリンプロテアーゼ阻害分子HAI-1(Hepatocyte Growth Factor Inhibitor-1)を切断・不活化することにより膜型のセリンプロテアーゼであるマトリプターゼを活性化し、その結果としてuPAおよびその下流につながるセリンプロテアーゼ活性化カスケイドを活性化することを見出した。さらにMT1-MMPによるセリンプロテアーゼカスケイド活性化に伴い、がん細胞は上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition, EMT)を起こすことを明らかにし、MT1-MMPによるがん細胞悪性化の新たなメカニズムのひとつであることを示した。また、セリンプロテアーゼの機能としてMMP-9の活性化が報告されていることからMT1-MMPがトリガーするプロテアーゼ活性化カスケイドによるMMP-9活性化を検証した。その結果、予想とは全く異なるメカニズムではあるがMT1-MMPが起点となってMMP-9活性化が起こることを見出した。IV型コラゲナーゼであるMMP-9は以前からがん浸潤・転移に重要であると言われながら活性化メカニズム及びその機能については不明の点が多かったが、今回の発見により新たな展開が期待される。
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