研究課題/領域番号 |
25460383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
定 清直 福井大学, 医学部, 教授 (10273765)
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研究分担者 |
千原 一泰 福井大学, 医学部, 准教授 (00314948)
竹内 健司 福井大学, 医学部, 助教 (40236419)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / チロシンキナーゼ |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)はヒト肝細胞のみならずB細胞にも感染し、Bリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma)などの疾患を引き起こすが、その発症機構は依然不明である。我々は以前、HCVのウイルス蛋白質の一つであるNS5AがB細胞チロシンキナーゼSykとFynに会合することを見出し報告を行った。そこで本研究ではHCVのB細胞における病原性メカニズムとして、HCVがチロシンキナーゼを介するシグナル伝達経路にどのような影響を及ぼしているのか、またチロシンキナーゼによるHCVの感染と複製への影響を解析し、HCVによるB細胞疾患の発症機構を解明しようとしている。 初年度である平成25年度は、様々なパイロットスタディを行った。まずNS5Aをチロシンリン酸化するキナーゼを調べ、次に各々のリン酸化部位の同定を試みた。生理的なキナーゼ・基質相互作用とは異なるためか、特にFynやSrcではHCV株の間で保存されたチロシンのみならず、それ以外のチロシン残基をもリン酸化することが明らかになった。一方、あるチロシンキナーゼではそのうちの限られたチロシン残基をリン酸化することが明らかとなり、ウイルス学的な解析によりウイルスの粒子形成の過程に重要な役割を担っているのではないかという予備的な知見を得た。さらにこれに関する新たなチロシンリン酸化蛋白質のプロテオーム解析を試みている。本研究は同一研究室所属の研究分担者2名(千原准教授、竹内助教)、連携研究者(神戸大学・堀田教授)と共同で遂行している。 これに加え、関連する研究内容であるチロシンキナーゼの作用機序と阻害薬についての総説を発表し、さらにチロシンキナーゼSykの基質であるアダプター蛋白質3BP2がニワトリB細胞においてグアニンヌクレオチド交換因子Vav3と会合し共役していることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要については上に述べた通りであり、おおむね順調に進展していると考えている。 当初の予定に加え、平成25年度中に得られた新たな知見に基づく全く新しい組換えHCVの実験を予定し、現在大臣確認実験の申請中である。プロテオーム解析についてはすでに実績があり、今後も引き続き解析を行う予定である。またHCV非構造蛋白質の一つであるNS5A以外の発現プラスミドを用いた実験も遂行しいている。一方B細胞を用いたHCVの実験系の確立には至らなかった。特に一過性発現系による実験は発現効率の問題が解決したとは言えない。Amaxaデバイスなどで検討した結果を参考に、次年度以降に引き続き検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を基に、平成26年度以降は以下の研究を推進する。 まずチロシンキナーゼによるHCVの感染と複製の調節機構についての解析について、すでに我々は候補となるチロシンキナーゼを複数同定し、かつリン酸化部位の同定を試みている。レトロウイルスではなく、RNAウイルスがチロシンリン酸化されることが初めて明らかとなったが、今後はHCVのライフサイクルである感染と複製、さらに可能であればウイルス粒子産生の調節にチロシンリン酸化がどのように関与しているのかを解析する。 またHCVによるチロシンキナーゼ活性とその調節機構への影響について、基質候補分子の網羅的解析を進め、これらの分子がどのようにHCV複製に影響するのかを、特にB細胞について解析を進める予定である。なお、平成26年度よりチロシンキナーゼの専門家である山内特命助教を研究分担者として追加した。
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