研究課題/領域番号 |
25460384
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
中村 悟己 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (20377740)
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研究分担者 |
柴田 清 浜松医科大学, 実験実習機器センター, 技術専門職員 (80397372)
藤江 三千男 浜松医科大学, 実験実習機器センター, 技術専門職員 (90397373)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胃癌 / ペプチド / プロテオーム解析 / シグナル伝達 |
研究概要 |
平成25年度の研究計画・方法については下記の予定に従い研究を行いました。 (1)胃癌細胞株におけるLIX1L発現解析:胃癌細胞株KATO-IIIとOCUM-1におけるLIX1L遺伝子・蛋白質の発現解析に加えて、胃癌細胞株MKN45とNUGC-4細胞を加えて解析を行いました。遺伝子発現はRT-PCRと半定量的PCRにて発現量の評価を行い、NUGC-4を除く胃癌細胞株において発現が亢進していることを明らかにしました。また、ペプチド2130はLIX1L発現しているKATO-III,OCUM-1,MKN45細胞にのみ抗腫瘍効果を示し、LIX1Lを発現していないNUGC-4細胞では抗腫瘍効果が認められませんでした。 (2)胃癌臨床検体におけるLIX1L発現解析:胃癌手術標本約600症例を対象にLIX1L蛋白質の発現を免疫染色にて検討したところ分化度には関わらず55~65%にLIX1L蛋白質の陽性症例を認めました。 (3)胃癌細胞におけるLIX1Lの機能解析:胃癌細胞株を用いて、胃癌細胞増殖にLIX1Lが関与していることを明らかにするために、LIX1Lが影響を及ぼすシグナル経路を同定する。LIX1Lは336アミノ酸から構成されている。シュミレーションにて予想リン酸化サイト(セリン、スレオニン、チロシン)を検索するとセリンでは11か所、スレオニンでは3か所、チロシンでは2か所見つかりました。各リン酸化抗体でウェスタンブロットを行い、チロシンのみにリン酸化が認められることが明らかとなりました。また、LIX1LにFLAGを融合させた蛋白質を抗FLAG抗体で免疫沈降してくることにより、核分画ではNucleolin, DHX9, hnRNPLと細胞質分画ではRIOK1, Nucleolin, PABPC4, PABPC1と関連していることが明らかになりました。 以上の結果から、ペプチド2130の胃癌細胞での抗腫瘍効果をもたらす標的分子があきらかとなり、分子標的治療薬開発の基礎的データが得られました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画・方法について、 (1)胃癌細胞株及KATP-III, OCUM-1,MKN45細胞株でのLIX1L遺伝子・蛋白質の過剰発現を明らかにし、ペプチド2130を胃癌細胞株に暴露することにより、胃癌細胞の増殖抑制効果を確認した。 (2)胃癌患者組織、正常胃組織におけるLIX1L遺伝子・蛋白質の発現解析を行い、胃癌細胞株及び胃癌組織において約60%にLIX1L蛋白質の発現を認めた。胃癌の分化度によるLIX1Lの発現に優位差は認められなかった。 (3)HEK293細胞にLIX1Lを定常的に発現させる系を確立し、HEK293細胞内でのLIX1Lの機能解析を行い、LIX1Lのリン酸化サイトやLIX1Lと関連する蛋白質の同定に成功した。 今年度の研究計画としてはほぼ予定通りに達成することができていると考えています。これらから得られたデータを基に更に各種癌組織での発現解析やLIX1Lの癌組織での機能解析及び、LIX1L阻害剤としてのペプチド2130のin vivoでの抗腫瘍効果も合わせて評価していく。
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今後の研究の推進方策 |
(1)In vivoでのペプチド2130の抗腫瘍効果について明らかにする:胃癌細胞株MKN45細胞をNOD/SCIDヌードマウスに移植することにより担癌マウスを作成し、In vivoにおけるペプチド2130の抗腫瘍効果の評価を行なう。ペプチド2130をDMSOに溶解後、生理食塩水で希釈して、マウスの腫瘍部位に直接、または尾静脈より注射投与する。投与濃度、投与回数や投与間隔を変えながら、腫瘍容積にて抗腫瘍効果を評価する。 (2)LIX1L蛋白質の各種癌組織における発現解析と増殖への関与:様々な癌組織の大腸癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、食道癌、肝臓癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌等でのLIX1Lの発現を解析する。また、それぞれの癌に由来する癌細胞株を用いてペプチド2130による抗腫瘍効果を検討する。 (3)LIX1Lに関連する蛋白質の癌細胞増殖への関与の検討:LIX1LとRNAを介して共沈してくる蛋白質Nucleolin, DHX9, hnRNPL、RIOK1, PABPC4, PABPC1の癌細胞における細胞増殖への関与をそれぞれ検討する。 (4)LIX1L蛋白質の生理活性部位の同定とキナーゼ阻害剤の検索:LIX1Lのリン酸化はチロシンにのみ認められているため、そのリン酸化チロシンの同定と、キナーゼアッセイによるチロシンキナーゼの同定を行い、同時にキナーゼ阻害剤の検索を行う。 (5)LIX1Lの標的RNAを同定:LIX1LはRNA結合ドメインを持つため、RNAに結合して癌細胞の増殖・生存に関与していることが推測されるため、LIX1L抗体を用いた免疫沈降により結合RNAを回収し、RNAを同定する。以上の結果から、LIX1Lの詳細な機能が明らかとなり、癌特異的な新規分子標的治療薬(キナーゼ阻害剤を含む)の開発に貢献することが予想される。
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