研究課題/領域番号 |
25460385
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山内 祥生 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00444878)
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研究分担者 |
古川 鋼一 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80211530)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん / 脂質代謝 / シグナル伝達 / 膜ドメイン |
研究実績の概要 |
細胞膜ドメインは、癌細胞の悪性形質発現に極めて重要な役割を果たしているが、その構築や維持に関する詳細なメカニズムはあまり知られていない。本研究課題は、メラノーマ細胞を中心とする癌細胞における細胞膜ドメイン機能を制御するシグナル及び脂質代謝を中心とした代謝基盤を理解し、悪性腫瘍に対する新しい治療戦略を見いだすことを主な目的としている。平成27年度は、以下の結果を得た。 ABCトランスポーターABCA1はリン脂質やコレステロールを膜内輸送する分子である。いくつかの癌においてABCA1を含むABCトランスポーターの発現と予後や悪性後との関連性が指摘されている。我々は、ABCA1に着目し、ABCA1の発現が脂質代謝や細胞膜ドメインに及ぼす影響について解析を行った。その結果、ABCA1遺伝子をノックアウトした細胞において、脂質合成を制御する転写因子SREBPが活性化し、コレステロール合成が亢進していることが明らかになった。また、ABCA1が細胞膜ドメインのコレステロールやガングリオシド含量を制御するとともに、細胞膜のカベオラ数を調節していることを明らかにした。さらに、ABCA1欠損細胞においては、細胞膜ドメインの重要な機能の一つであるエンドサイトーシスに障害があることが認められた。これらの結果をふまえ、ABCA1の細胞内分布について解析を行った結果、ABCA1が特殊な膜環境に局在することが明らかになった。これらの研究成果は、国際的な研究雑誌であるJ Biol Chem(Yamauchi et al., 2015, J Biol Chem 290: 23464-23477)やJ Lipid Res(Yamauchi et al., 2016, J Lipid Res 57: 77-88)に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した研究が順調に進展している。本年度は、細胞膜ドメイン機能を制御する分子を同定するとともに、その分子機構について解析し、国際誌に論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
癌関連シグナルが脂質代謝を制御する分子メカニズムを解析し、細胞膜ドメイン機能を制御する脂質代謝基盤について解析を行う。特に、SREBPによって制御されるメバロン酸経路の腫瘍生物学的意義について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年9月に出版された細胞膜ドメイン機能に関する論文(Yamauchi et al., 2015, J Biol Chem 290, 23464-23477)が受理されるまでに想定以上の時間を要し、細胞膜ドメイン機能を制御する代謝基盤に関する研究の試薬の購入及び成果発表が次年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、細胞膜ドメイン機能を制御する代謝基盤に関する研究を実施するための試薬購入費、研究発表のための旅費や出版費として使用する。
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