研究課題
基盤研究(C)
本研究は新規NF-κB制御分子ヌクリング(Nucling)のヒト生体内における生理機能と病態における意義の解明を目標としている。本年度はヌクリングKOマウスにおける非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)を中心とした代謝異常症の発症病態を詳細に検討した。NAFLDは肝臓におけるアルコール非依存の脂肪蓄積異常として特徴付けられ、インスリン抵抗性や高インスリン血症といったメタボリック症候群に関係する兆候を示す。NAFLDと高インスリン血症がどのようにして結びついているのかはあまりよく分かっていないが、NAFLDは肝臓だけで無く、膵臓、脂肪組織、筋肉などの機能にも影響を及ぼし、それら臓器の炎症反応へ至ることが分かっているため、高インスリン血症もNAFLDの結果であろうと一般に考えられている。我々は高インスリン血症を来す一因となり得るインスリンの発現制御異常が、NAFLDの発症要因となることを見出した。これはインスリン発現異常とNAFLDがフィードバックループにより病態の増悪をもたらすことを示唆する。インスリンの遺伝子発現は膵内分泌腺のβ細胞に於いて緻密に制御されている。この制御の破綻は容易に糖尿病などの異常を引き起こす。栄養素やホルモン刺激によるインスリン発現誘導機構は精力的に研究されてきたが、そのような刺激が無い状態におけるインスリンの発現制御機構に関する研究はほとんど報告が無い。我々はヌクリングの発現不全が、無刺激状態におけるインスリン及びその上流分子であるPdx-1の発現異常を来すことを、膵臓組織及び膵培養細胞系で確認した。またヌクリングノックアウトマウスでは糖代謝異常と共にNAFLD様所見が確認された。以上より、ヌクリングは無刺激状態におけるインスリン発現制御に重要であり、その制御不全が代謝異常を引き起こすと考えられた。以上の成果は第86回日本生化学会大会にて報告した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で予定した「ヌクリングKOマウスにおける糖脂質及びその他の代謝系に障害が無いかを詳細に検討する」実験をほぼ完了することができた。
実験計画の予定通り、分子レベルでの発症機構解明のための詳細な検討及び実験に移る。
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月刊バイオインダストリー
巻: 31 ページ: 11-16