研究課題
リソソーム病では、過剰蓄積が起こったリソソームから何らかの異常シグナルが細胞内に伝達され、神経変性を含む脳内環境の破綻が起こり、その結果として神経機能の異常を起こしていると考えられる。しかしながら、疾患における神経機能と生体内基質蓄積との関係に関する研究は殆ど行われていないのが現状であり、神経機能異常メカニズムは依然として不明である。中枢神経症状を伴う代表的なリソソーム病であるGM2ガングリオシドーシスは、リソソーム酵素であるβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex)の欠損に基づき、糖脂質であるGM2ガングリオシド(GM2)が過剰に蓄積して発症する常染色体劣性遺伝病である。本研究では、GM2ガングリオシドーシスモデルマウス及び樹立した神経系細胞を用いて、各細胞間の恒常性維持及び破綻機構を解明し、さらに正常酵素の補充による効果を、蛍光プローブを用いてイメージング解析を行い、正常化したグリア‐神経の脳内環境と機能回復との関係を明らかにし、最終的に患者由来iPS細胞から分化させた各神経系細胞で再現を試みることを目的とした。GM2ガングリオシドーシスモデルにおける細胞内異常シグナル鍵因子の特定を行った結果、脳に置いてリソソーム生合成を制御している転写因子であるTranscription factor EB (TFEB)が増大しており、核移行を起こしていることが明らかになった。またLC3の増大が観察され、オートファジーが亢進していることが示唆された。さらにGM2ガングリオシドーシス患者由来iPS細胞から神経細胞への分化誘導を行い、PI3Kシグナル異常が細胞死の原因となっていることを明らかにした。これらの成果は、GM2ガングリオシドーシスをはじめとする糖脂質が蓄積するリソソーム病に対する治療標的となりうる。
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